安心な飲み水は人々の生活に不可欠である。もし体に悪影響を及ぼす可能性があるのなら、しっかりとした予防対策を講じなければならない。発がん性が指摘される有機フッ素化合物(PFAS)の全国調査を踏まえ、国は定期的な水質検査と基準値を超えた場合の改善を法律で義務付ける方針を決めた。
国は関係省令を改正し、来春の施行を目指す。現行の暫定目標値を基準値とする方向だが、欧米並みの厳格化も求められよう。県や市町等の各水道事業者は施行前でも引き続き定期的な検査を重ね、安全な水質管理の徹底と情報公開に努めるべきだ。
PFASは水や油をはじき、熱に強い特徴があり、フライパンのコーティングや食品包装などに広く使われてきた。航空機火災用の泡消化剤にも使われており、米軍や自衛隊基地周辺の水源などで検出される事例が多い。
国が2024年11月末に公表した水道水の全国調査では、本年度は富山県を除く46都道府県の332水道事業者でPFASが検出され、本県でも真岡や栃木など7市町の水道事業者から検出された。PFASの代表物質PFOAとPFOSの合計で1リットル当たり50ナノグラム(ナノは10億分の1)という国の暫定目標値を超えた水道事業者はなかった。
現在は水道事業者のPFAS検査は任意で、暫定目標値を超えても水質改善などの対応は努力義務である。県によると、国が暫定目標値を設定した20年度以降、26ある市町などの水道事業者等は少なくても1回は検査しており、暫定目標値を超えた例はない。
しかし米国は2物質の飲料水の規制値を、それぞれ1リットル当たり4ナノグラムと設定。ドイツは28年に2物質を含む4種類のPFAS合計で同20ナノグラムとする方向という。国は世界的な潮流に沿った対応を検討すべきだろう。
改正法令の施行後、国は3カ月に1回の検査を基本とする。水道事業者には検査費用の負担増のほか、基準値を超えた場合の水質改善策が求められる。検査や除去技術などで、国や県による水道事業者の支援は欠かせない。
一方、県は昨年12月から各市町の水道事業者等の検査結果をホームページで閲覧できるようにした。PFASに関連した新たな科学的知見とともに、検査結果の迅速な公開に取り組むべきだ。