不登校の増加を受け「不登校総合対策の方向性」を検討している県教委は本年度、児童生徒や保護者に対する初の大規模な調査を実施した。不登校を経験した子どもや保護者など、当事者の声を吸い上げた意義は大きい。これを今後の対策にどれだけ生かせるかが問われる。
児童生徒対象の「学校生活における意識調査」は昨年7、8月、県内公立校の小学6年、中学2年、高校2年のうち約3万人が回答した。子どもの欠席が多い保護者を対象に行った「不登校に関する保護者の支援ニーズに関する調査」は昨年9月、約2千人が回答した。
欠席したことのある児童生徒の欠席のきっかけは小学、中学、高校ともに「友人との関係」と「身体の不調」が、それぞれ3、4割を占めた。子どもが1カ月以上欠席した保護者の回答では小学で「先生との関係」が5割弱、中学、高校では「クラスの雰囲気」が約4割だった。
不登校の理由については2022年度、教員の見立てに基づく調査が行われたが、「無気力・不安」が4~6割を占め、「友人関係(いじめを除く)」は1割程度に過ぎなかった。当事者と学校側の認識に隔たりがなかったか、見直す必要があるだろう。
欠席している間、自宅のみで過ごしていた児童生徒は4、5割に上り、年齢が上がるほど高い傾向にあった。学ぶ権利の保障は大きな課題だ。
県教委は調査結果などを踏まえ、2月にも不登校総合対策の方向性をまとめる。昨年12月の検討委員会で(1)未然防止(2)初期対応(3)不登校児童生徒の支援-の三つの柱から成る素案を示した。
中でも、不登校児童生徒の支援の一つに位置付けられた「官民を問わず多様な学びの場につなぐことのできる県全体の仕組みづくり」は、今後の焦点となるだろう。懸案だったフリースクールや関係機関との連携を巡る課題の整理、学校外の支援機関の利用者増への対応などは早急に進めるべきだ。
県内の公立小中学校の不登校児童生徒数は23年度、過去最多の5805人となった。学校だけで対応するには限界だろう。子どもや保護者の声に耳を傾けながら、市町や民間の支援機関も含めた「総合対策」が実効性を伴うよう、財源措置を含め県全体で後押ししなければならない。