医師の代わりに一部の診療行為ができる「診療看護師」の存在感が高まっている。働き方改革に伴い医師の時間外労働時間の上限が規制され、医師不足が一層深刻化しているためだ。

 昨年4月の時点で有資格者は全国に872人、県内では8人登録している。昨年9月に1人採用した宇都宮市の済生会宇都宮病院では、医師の業務負荷が減るなど一定の成果を上げているという。

 だが、資格取得に時間や費用がかかる。全国の医療機関で人材争奪戦にもなっている。県や県内の主要な医療機関には、資格取得を希望する人材の育成と支援を求めたい。その上で、国は新たな公的制度の創設を検討すべきだ。

 診療看護師は、大学院の診療看護師養成課程(修士)を修了して認定試験に合格し、一定の診療を担うことができる看護師。5年以上の実務経験も必要。米国で1960年代に広まったナースプラクティショナー(NP)の日本版に当たる。米国では一定の診療行為を行うことができ、30万人以上のNPが医療を支えている。日本では、看護師が医療行為を独自の判断で行うことは禁止されている。

 試験は一般社団法人の日本NP教育大学院協議会が実施している。先行する米国などでは国家資格であるのに対し、日本では民間資格にとどまる。このため、日本看護協会などは新たな公的制度の創設を要望している。安定した医療の提供のためにも、国は早期に制度を整備すべきだ。

 診療看護師と混同されやすいのが、厚生労働省が認証機関の「特定看護師」だ。認証されると人工呼吸器からの離脱などの特定行為が可能となる。ただ特定看護師は資格ではなく、研修を修了した看護師に対する呼称である。

 一方、診療看護師は特定行為が可能となるだけでなく、医師の指示によって広い範囲の「相対的医行為」ができる。チーム医療の推進や、医師の業務を分担するのに有効ともされている。過疎地での訪問診療でも活躍の場がありそうだが、県内ではそこまで至っていない。

 新たな公的制度を創設する場合、診療看護師と特定看護師の整理統合が必要となるだろう。先行する諸外国の事例を研究し、診療看護師の医療行為にどこまで医師の指示が必要かを法的に再検討することも求められる。