国際医療福祉大は4月、大田原市北金丸の大田原キャンパスに臨床検査技師を養成する「医学検査学科」を新設する。高齢化に伴う医療需要の増大や、最先端医療への対応にも不可欠な県内の臨床検査技師は慢性的に不足しているとされ、地域医療を支える人材の輩出を期待したい。

 臨床検査技師は新型コロナウイルス流行時、爆発的に需要が高まったPCR検査の担い手として注目された。

 医療機関などで脳波や心電図、超音波といった幅広い検査に当たる。単なる検査データにとどまらず患者の状況などを加味・分析した情報を提供する「検査のプロ」で、医師による的確な診断・治療に欠かせない。一方、人材は不足し国福大病院(那須塩原市)、同大塩谷病院(矢板市)でも十分ではないという。

 人口が減っても、高齢者が増えれば医療需要は大きくなる。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2020年に約56万人だった本県の65歳以上人口は40年に約61万人に増加する。

 しかも臨床検査技師の活躍の場は拡大している。患者ごとにオーダーメードで治療するがんゲノム医療の遺伝子検査、不妊治療での胚培養などだ。在宅医療に携わるケースも増えつつあり、人材の養成・確保は急務である。

 県内養成校は1学年定員20人の県衛生福祉大のみだ。臨床検査技師を志す学生は大都市圏の養成校で学び、地元に戻ることは多くないとされる。人材の偏在は構造的問題だ。県臨床検査技師会には約千人が在籍しているが、今のままでは地方の人材不足の深刻化は避けられない。

 国福大に1学年80人の学科ができる意義は大きい。県内で活躍する人材が増えることを望みたい。

 国福大は臨床検査技師の国家資格取得を最重視した上で、先進医療に適応できる人材を育てるコースも設ける。キャリアアップを目指す学生にとって、進路を選択できる機会になるだろう。

 大田原キャンパスで九つ目の学科だ。医療福祉分野の既存8学科と連携を密にし、チーム医療・チームケアの知見・スキルを実践的に身に付けられることも特色だ。

 新学科の開設は、ことしの開学30周年の目玉でもある。大学の総合力を生かし、優れた人材を養成する力を向上させてほしい。