プロスポーツ界では「禁断」とされる移籍がある。ホームタウンが同じであったり、歴史的にライバル関係だったりするチーム間の選手の移籍を指す。応援や歓迎もある一方で、「裏切り者」と批判を浴びることも少なくない。かつてサッカーのスペインリーグでバルセロナからレアル・マドリードに入団したルイス・フィーゴ氏(ポルトガル)はクラシコと呼ばれる古巣との一戦で大ブーイングを浴び、観客席からピッチ上に豚の頭が投げ込まれる騒動にまで発展した。

 年が明けたばかりの5日、栃木SCと栃木シティから同じタイミングで移籍の発表があった。「森俊貴(もりとしき)選手、栃木シティへ完全移籍」。オフシーズンに入って約2カ月間契約更新が発表されず、交渉の難航は予想されたが、このリリースはまささしく寝耳に水。もちろんフィーゴ氏の例ほどの騒ぎではない。それでも栃木SC下部組織出身で10番を背負う生え抜きの移籍は、SNS上で少なからず衝撃を持って受け止められた。

「鳥かご」で守備役を務める森(右)
「鳥かご」で守備役を務める森(右)

 それから20日後の24日、栃木シティの練習で森を取材する機会を得た。