小山市は新年度の機構改革で、保健福祉部の子育て施策担当課を市教委に移管して、誕生前から乳幼児期を経て青年期まで切れ目ない支援を進める体制を目指す。年度内に策定する「おやまこどもプラン」に沿い、学校施設を有効活用しながら子どもたちの環境充実を図る。
一方、子どもや若者を取り巻く課題は複雑・多様化し、行政の力だけでは明るい未来を展望するのは難しいのが現状だ。幅広く市民の意向を反映させる観点からも、民間の子育て支援団体との連携強化を急ぐべきだ。
機構改革は、こども政策、子育て家庭支援、保育の保健福祉部3課を市教委に移し、こども教育(学校教育)、学校支援、青少年支援の3課と合わせ「こども未来部」を新設。一元的な体制として「こどもまんなか社会」の実現を目指すとしている。
詳細は異なるものの、県内では野木町や那須町など小規模自治体では既に同様の組織統合を推進。幼稚園・保育園と小学校の連携強化による進学時のギャップ解消など成果を上げている。
小山市では、さらに幅広い施策を束ねて一元化する方針だが、大規模自治体特有の縦割りをどう解消するかが試される。新年度時点で計34の小中・義務教育校を有し、市街地の大規模校から農村部の小規模校まで環境や課題が大きく異なる状況も、施策推進のハードルになるとみられる。
対応策の一つとして市は、学校施設の有効活用を急ぐ。今秋、学童保育利用者を含めた全児童を対象に学びや体験の場を提供する「放課後こどもの居場所」づくりに着手。市街地と農村部の各1校をモデル校に特別教室などを活用し、児童数の変化などに柔軟に応じた仕組みを考える。
市内では2004年、幼い兄弟が虐待を受けた末に殺害された「小山事件」が発生。虐待防止を訴える「オレンジリボンキャンペーン」が始まった。痛ましい事件を教訓に子育て環境の充実を望む市民の意識は高く、新たな団体発足が相次いでいる。
市は新年度、こうした団体同士の連携を促進させる組織の立ち上げを予定する。活動する人たちの多くは貧困や虐待といった課題を抱える親子に寄り添い、現場の切実なニーズを把握する貴重な存在でもある。市は子育ての新たなモデル構築に注力すべきだ。