介護事業者の倒産が全国で相次いでいる。東京商工リサーチによると、2024年は172件と調査を始めた00年以降で最多だった。本県も4件と前年のゼロから急増し、休廃業8件を含めると12件と前年の計7件を上回った。
物価高に伴う運営コストの増加に加え、深刻な介護職員不足が拍車をかけた。倒産や休廃業がさらに広がれば、必要なサービスが受けられない「介護難民」が本県でも生じる恐れがある。一層の経営効率化などが事業者に求められる一方、国や県、市町も経営実態を早期に把握し対策に生かすべきだ。
介護事業者の倒産は16年に始めて100件を超え、新型コロナウイルス禍が始まった20年は118件だった。21年は国によるコロナ関連の支援策などがあり81件まで減少したが、22年は支援が縮小し物価高も重なって143件まで増加していた。
24年の倒産件数を業種別で見ると、ホームヘルパーが高齢者宅を訪れる「訪問介護」81件、デイサービスなど「通所・短期入所」56件、「有料老人ホーム」18件の順に多かった。4件だった本県を含め29都府県で件数が増えた。
県によると、県と市町が指定する介護事業者は今年1月1日時点で2785。何らかの理由で指定を更新しない事業者もあるが、新規に指定される事業者が廃業数を上回り近年は全体として微増傾向になっているという。
本年度の改正介護保険法施行により、一定規模の事業者は毎年度、財務状況などの経営情報を都道府県知事に報告することが義務付けられた。各事業者が国のデータベースに情報を入力する作業は今月始まったという。赤字の事業者をどのようにサポートし健全経営に改善させるのか、県や市町は実態に即した支援体制の構築を目指すべきだ。
倒産の業種別では、訪問介護の多さが際立っている。報酬改定で本年度から訪問介護の基本報酬が約2%引き下げられ、その影響が指摘されている。効率的な巡回が可能な都市部に比べ、地域に密着したサービスほど負担が多く、収益の向上は非常に難しいとされる。
国、県はこうした実情に目を向け、担い手の確保や事業者の経営改善の観点から支援するスキームを早急に設け、持続可能な介護保険制度にすることが求められている。