県内では冬から春先にかけて、田んぼの病害虫防除などを目的に、田畑の周りのあぜ道などの枯れ草を燃やす野焼きが行われる地域がある。
野焼きはこれまで、やけどによる死亡事故や延焼による建物火災の原因となるなど危険性が高いことから、国や県は自粛を求めている。しかし農村の慣習として続いてきた野焼きを望む声が強く、両者の間で板挟みになっている市町も少なくない。
温暖化の影響で、イネなどに害を与えるカメムシの脅威も増しているが、野焼きによる防除の効果は限定的という見方もある。国や県、市町は農業団体と連携し、野焼きの効果を検証する必要がある。
廃棄物処理法では、廃棄物の屋外焼却は原則禁止されており、罰金刑の対象となる。しかし農業などを営むためにやむを得ず行う場合は、例外となる。あぜ道の野焼きも、例外の一つとされている。
県内では「野火焼き」「芝焼き」とも呼ばれる。2011年の東京電力福島第1原発事故で飛散した放射性物質の拡散を防ぐため、減少した時期がある。野焼きによる死亡事故や火災も相次いでおり、23、24年には、それぞれ少なくとも2人が死亡した。
しかし現在も一部の市町で一斉に行われたり、集落ごとに行われたりしている。矢板市は死亡事故を受けて21年度に一斉実施をやめたが、昨年のカメムシの大量発生を受けて、野焼きの要望が多く寄せられ、今年は実施することにした。法律で禁止されていない以上、止められない。実施するなら、消防団による延焼の警戒などの安全対策も一斉に行うという判断である。
一方、県農政部によると、カメムシの多くは山林などの落ち葉の下で越冬することが分かっており、あぜ道の野焼きによる防除効果は「限定的」という。その他の病害虫についても、効果は一時的にとどまるという過去の報告もあるというが、野焼きを禁止するだけの説得力に欠ける。
野焼きは近隣住民への煙害、ぜんそくのある人への健康被害も懸念される。そのリスクを上回るほどの効果があるのかどうか。野焼きの是非を判断するためにも、検証は欠かせないはずだ。効果があるなら、より安全な方法で野焼きを実施するルール作りも欠かせない。同時に野焼き以外の病害虫防除対策の普及、啓発にも力を入れるべきだ。