多数の犬を不適切に飼育したとして、動物保護団体の女性代表が動物愛護法違反に問われた事件は、殺処分される犬を救いたいとの思いが行き過ぎたことが一因だ。一方で、犬を譲渡した県動物愛護指導センターは、同団体の犬の新たな行き先を3割程度しか把握していないなど、管理の不十分さも指摘されている。

 適切な飼育ができないほどの犬を受け入れた女性はもちろんだが、行政の責任も大きい。ただ、現行法では強制的に動物を保護できないなど対応が困難な面もあり、必要な法改正が求められる。さらに野犬を減らすなど根本的な対策も重要だ。

 この女性は2015年、センターの「団体等譲渡事業」に登録し、自宅敷地内の施設などで飼育していた。下野新聞が県への情報公開請求で入手した資料によると、女性や団体メンバーが譲渡を受けた犬は9年間で1266頭、多い年で200頭以上に上る。

 女性は「殺処分される犬を救いたい一心だった」としている。飼育できないほど多数の動物をため込み、周囲では「多頭飼育崩壊」と指摘する声も上がっていた。

 団体は最終的な飼い主への「仲介役」を担っていたが、センターは行き先を3割程度しか把握しないまま譲渡を続けていた。さらに団体への現地調査は3年に1度で、いずれも適正と判断していた。ずさんな管理と言わざるを得ず、改善が求められる。

 一方で、別の団体がこの団体の承諾を得た上で保護できたのは十数頭にとどまる。現在の動物愛護法では、飼い主に「所有権」があるため、強制的に保護できない。全国の保護団体などからは法改正を求める動きが出ており、前向きな対応が必要だろう。

 今回の件を受け、センターは団体等譲渡事業の実施要領の改定を進めている。13の登録団体を対象に昨秋実施したアンケートの回答結果を踏まえ、説明会を開いた上で年度内に改定するという。改善すべき点をしっかり見据え、虐待や公衆衛生上の問題につながらない譲渡事業を確立してほしい。

 団体等譲渡事業は殺処分減を目指し11年に始めたものだ。殺処分を減らす根本的な対策は野犬を減らすことである。不妊去勢手術の助成などを挙げる専門家もおり、一つの方策として検討の余地はあるだろう。