県内で交通死亡事故が後を絶たない。今年に入り5日現在で12件発生し、12人が亡くなった。前年5月途中までの死者数に相当し、人口10万人当たりでは全国ワースト1位という異常事態だ。

 県交通安全対策協議会は交通死亡事故多発警報を既に2度発令し、2度期間を延長する異例の対応を取っている。県警が啓発や取り締まりを強化するのはもちろん、車や自転車の運転者、歩行者いずれも基本に立ち返り、交通ルール順守に努めるべきだ。

 県警交通企画課によると、死者の7割近くを65歳以上の高齢者が占め、薄暮時から朝方にかけた事故が目立つ。さらに特徴的なのは信号機のある交差点での四輪車同士の死亡事故の多さだ。昨年は1年間で1件だった事故数が、今年は既に3件で3人が死亡。信号機のある交差点では本来、それぞれが交通ルールを守ってさえいれば大きな事故は起きないはずだが、そうした前提が崩れたかのようだ。

 昨年1年間の県内の交通事故死者数は60人で、県警が抑止目標として掲げた死者数だった。一方、重傷者の目標490人に対し昨年は559人。重傷事故件数は531件で、いずれも令和に入って最悪の数字を記録した。

 「重傷事故は一つ間違えば死亡事故につながる」とする同課は「もともと死亡事故が多発する素地があった」と分析。事故の第1原因者に信号や一時停止の無視が少なくないといい、「ルールを守らない人が事故を起こしている可能性がある」と指摘する。

 事故抑止にはこうした「事故予備軍」を中心に、幅広い年代にルール順守を呼びかけることが鍵になろう。

 車のドライバーには、夜間に原則としてヘッドライトを上向きにする「ハイビーム」をあらためて徹底したい。一方、歩行者も「車から自分は見えているはずだ」という思い込みをなくし、明るい色の服装や反射材の着用を心がけることが肝要だ。

 昨年11月施行の改正道交法で罰則が強化された自転車の利用者にも、あらためて法令順守を呼びかけたい。法改正以降、酒気帯び運転の摘発件数は1月末現在で23件あった。モラルの向上は急務だ。

 死亡事故は当事者のみならず、家族や友人など大勢を悲しみの中に巻き込んでしまう。県民挙げて事故の防止に努めたい。