県政史上最多の6期目を迎えた福田富一(ふくだとみかず)知事の下で編成された2025年度県当初予算案が7日、発表された。重点施策に掲げた少子化対策や人づくり・女性活躍の推進、地域経済の活性化、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進は、いずれも本県の地方創生の成否を左右する鍵となる。

 国が10年間取り組んできた地方創生は東京一極集中の是正には至らず、本県でも進学や就職を機に若者、特に女性の流出が続いている。福田知事は会見で「地方創生第2幕がスタートした。1幕は国も地方も成果を上げられなかった。2幕の失敗は許されない」と強い決意を示した。

 ポイントは、新たな価値観に基づき施策を展開できるかどうかだろう。少子化傾向に歯止めをかけるため、新年度も結婚支援の充実や子育て環境の整備に取り組むとしている。が、そもそも結婚や出産を望む若者は徐々に減りつつある。結婚や出産を促すだけでは「少子化トレンドの反転」には至るまい。

 県内の出生数は年々減少しており、23年は初めて1万人を下回った。1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は1・19となり、4年連続で過去最低を更新した。県は60年の県人口の目標値を、従来の150万人から140万人に下方修正せざるを得なくなった。

 少子化の背景には経済格差の拡大や長時間労働、女性が流出する背景には、地方に根強い性別に基づく固定的役割分担意識なども指摘される。まずは本県の若者や女性を取り巻く現状を、冷静に分析する必要がある。

 新年度は「県人口未来会議」や「少子化対策アドバイザー」「女性活躍推進フェロー」を新たに設置、委嘱する方針という。こうした外部有識者の視点も取り入れ、これまでの課題を抽出した上で、本県の創生に結びつく新たな価値観を生み出すべきだ。

 地方創生には地域経済の活性化も欠かせない。経済の好循環に向けた持続的な賃上げを実現するため、価格転嫁の促進や、生産性向上の支援策も盛り込んだ。

 これらに先駆け、5%以上の賃上げと企業内男女間格差の是正に取り組む中小企業への支援策を、本年度2月補正予算案に計上した。全国でワーストとなった本県の男女間賃金格差の是正につながれば、女性の流出を防ぐためにも有効となるだろう。

 労働力人口が減少する中、本県は外国人材の確保でも後れを取っている。技能実習制度から育成就労制度への移行を見据え、外国人雇用に関する支援体制を強化し、同時に地域での受け入れ環境も整備しなければならない。

 知事就任から20年で、社会のありようは大きく変化した。団塊の世代が全員、後期高齢者となり、現役世代はますます減少する。新型コロナウイルス禍を経て生活様式や働き方も変わった。

 従来の手法では通用しない局面にぶつかることもあるだろう。これまでの価値観にとらわれることなく、より効果的に予算が執行されるよう、不断の努力が求められる。

 6期目の福田県政がマンネリに陥ることのないよう、県議会も緊張感を持って議論し、監視していく必要がある。