県と県文化協会は日光杉並木街道の植樹400年を記念し「日光杉並木映像作品コンテスト」を実施した。映像に特化した事業は本県文化財への愛着と保護への理解を深める上で有意義だが、応募数の少なさが課題として浮き彫りになった。多くの県民が参加し貴重な文化財の魅力を発信できるよう、従来の形にとらわれない手法を考えたい。
コンテストは、国特別史跡と国特別天然記念物の二重指定を受ける全国唯一の文化財を後世に伝えるため、植樹400年を機に企画した。県は日光杉並木への理解を深めイメージアップにつながる映像を撮影してもらおうと、昨年7月に現地見学会、10月には撮影会を開催。この結果、多彩な撮影技術で「並木守」を中心に描いた映像やオートバイ愛好家の視点で捉えた映像など、杉並木を魅力的に表現した3作品が入賞した。
一方で、応募はわずか11点にとどまっており、県民参加型の事業にしては寂しい状況となった。県は2017~19年度、県民などを対象に本県の魅力を発信する「メディア芸術コンテスト」を実施。映像に特化することで多くの若者の参加を期待したが、各年度とも応募は十数点だった。
応募数の伸び悩みについて県文化振興課は周知不足などを課題に挙げているが、それ以前に募集の手法に一因はなかっただろうか。
応募規定では、それぞれ解像度や画面のサイズ比など「映像作品」としての規格を定めている。一定の質を保つ上では必要かもしれないが、「映像関係者が応募する専門性の高いコンテスト」との印象を与えかねず、応募に二の足を踏む人もいただろう。
1月末、県広報課の公式ユーチューブチャンネルがショート動画の投稿を増やしたことなどから、約1年で登録者を倍増させたという。手軽に発信・視聴する若い世代のニーズを反映したこの結果は、コンテストで県民参加を促すヒントになるのではないか。
文化財を後世に引き継ぐためには、より多くの県民の関心と理解が不可欠だ。コンテストはその一助となるだけに、県はスマートフォンで応募できる動画部門の新設など、誰もが気軽に参加できる手法を採り入れて事業を続けてほしい。間口を広げ次世代の共感が得られれば、文化財に対する愛着と保護意識も、おのずと上向いていくだろう。