地震や風水害で道路が寸断するなどして孤立する可能性のある県内の集落は、県の最新の調査で15市町544集落に上っており、本県の中山間地域にある集落の半数以上に当たる。
調査では生活品の備蓄や非常時の通信手段の確保などが進んでいない状況も判明した。該当する市町の行政関係者はもちろん、当事者の住民も人ごととはせず、最悪の事態を想定して備えに万全を期したい。
能登半島地震では半島特有の険しい地形もあり、集落の孤立が広い範囲で多数発生した。孤立集落の定義が本県とは異なるため一概には比較できないが、最も多い時で3千人以上が孤立し、実質的に解消したのは地震から3週間近くがたっていた。
こうした事態を受け、本県は中山間地域にある集落を基本として調査した。市町別の集落数は佐野市が90で最多、次いで茂木町の89、鹿沼市77、足利市74と続く。沢づたいの道路沿いに点在する集落が多いという。
この調査結果は、集落へのアクセス道路の一部区間が土砂災害警戒区域に隣接するなど、一律の基準による画一的なデータから算出した。県は2025年度、真に対策が必要な地域を洗い出す。その結果として孤立可能性のある集落数は、今回の544より減る可能性が高いという。
13年の前回調査では、孤立可能性のある集落は249だった。今回2倍以上に増えたのは、県内の土砂災害警戒区域の指定が進んだことなどが背景にある。費用対効果を最大限にするためにも、対象地域の精査は進めるべきだ。
孤立可能性のある集落の防災対策状況は前回調査に比べて大幅に改善したが、満足できる水準とは言い難い。食料やトイレなどの備蓄があるのは25・2%、衛星携帯電話などの通信手段を用意しているのは31・6%、傷病者の輸送に欠かせないヘリの駐機スペースがあるのは44・5%にとどまった。
県危機管理課は「いずれも実施割合が低く、平時からの備えが十分でない」としている。備えが不十分な市町に対しては、県が積極的に支援してほしい。
ただ食料の備蓄などは個人でもできることが多い。今回対象となった集落の住民は、自分の身を守るためにもできることから着手したい。