本県医療の望ましい形を協議する県地域医療構想調整会議が昨年6月にスタートし、医療関係者を中心に検討を重ねている。当面の課題解決とともに期待したいのは、高齢者数がピークとなる2040年ごろを見据えた地域医療の再編ビジョンだ。

 地域医療は守らなくてはならない。それは医療機関のためでなく、県民のためにである。県民のニーズを把握しながら、救急医療、感染症や災害対応などの重要課題に備える医療資源の調整を進めるべきだ。

 「地域医療構想」策定は全国的に進められている。高齢者の増加に伴う医療費膨張を抑制し、医療ニーズの変化に対応しようとの政府方針に基づくものだ。

 本県では15年度に、25年度の将来像を定めた「地域医療構想」を策定しており、今回はこれを更新する形となる。

 地域医療の課題解決に向けた動きを加速させるため昨夏、本県の宇都宮医療圏(宇都宮市)を含む全国12府県の14医療圏が「モデル推進地区」に選ばれ、データ分析などの技術支援や財政支援が重点的に実施されることになっている。

 この選定により、宇都宮医療圏は、他医療圏の患者の対応も前提に体制確保を図ることや、公的・公立病院を含めた医療機関を再整備することなどの素案が示された。まずは、全国に先駆けたモデル地区である宇都宮医療圏での成果に注目したい。

 27年度から始まる次期構想は、団塊ジュニア世代が65歳以上となり、高齢者が全国で3900万人を超える「40年問題」を見据える意味で、重要だ。

 高齢者の増加は、当然医療費を膨らませることになる。高血圧や糖尿病、腎臓病などの慢性的な症状への需要も増大するに違いない。想定される人口構造の変化に見合った役割への転換やスリム化などが一層、求められることになる。

 新型コロナ禍が沈静化しても、今冬にはインフルエンザの流行で県内医療が逼迫(ひっぱく)した。救急医療、感染症対応をどの水準まで確保するかという課題は目の前にある。

 抱える医療課題のすべてに万全の手当てができない時代が迫っている。県民と危機感を共有して、地域医療の将来像を丁寧に描いていってほしい。