次世代型路面電車(LRT)のJR宇都宮駅西側延伸を巡り、宇都宮市は大通りのうち中心市街地を通る区間を現在の片側3車線から1車線に減らす方針を決めた。開業後はLRT軌道と、バスや乗用車などが通行する車道、歩道に再編される。県都の幹線道路を、公共交通と人に割り振る道路行政の大胆な転換となる。新たな空間利用に向けては市民の理解と協力が欠かせず、市は丁寧な説明に努めるべきだ。

 市はLRTを同駅東口からJRを横断して県教育会館まで延伸する考え。約5キロの区間に12の停留場を置き、2030年の運行開始を目指す。25年中に、軌道建設に必要な特許申請を行う。

 幅約30メートルの大通りは現在、両側に最大6車線の車道、歩道がある。片側1車線となるのは同駅西口から宇都宮地方裁判所前までの区間。全ての交差点に右折レーンを設けるほか、バス停車帯や物流事業者向けの荷さばき場を本線とは別に確保し、混雑緩和を図る。さらに都心環状線など周辺道路の整備によって、大通りへの通過交通車両の迂回(うかい)を促し、流入の抑制に努める。

 LRTの西側延伸に当たり、車両通行量の多い大通り空間をどう再編するかは大きな焦点だった。市は車線を減らした場合の交通影響を調査。右折レーンの延長、路線バスの削減、信号調整、車からLRTへの転換などを行えば、現況の渋滞とほぼ変わらないとの結論を得た。

 ただ本県は全国有数の車社会だ。車線減少による渋滞発生の懸念、車から公共交通への乗り換えに抵抗もあるだろう。駅東側と異なり、西側には官公庁や商店街、学校など関係者も多く存在する。市は延伸後の中心部の姿を分かりやすくイメージできる動画を作成した。有効に活用し、市民の理解と協力を得る努力を継続すべきだ。

 西側延伸の成否は、路線バスの再編も鍵を握っていると言える。市は、LRTと重複する大通り区間のバスを3割削減し、郊外部への幹線バスや都心部の循環バスに振り分ける考えだ。大通りのバス停の統合・集約化も検討している。より使いやすいバス利用環境の構築によって、LRTとの乗り継ぎをスムーズにし、車から公共交通への転換を進めたい。車線とバスが減り、移動が不便になることは避けなければならない。