女性の地位向上を目指し、国連が3月8日を「国際女性デー」と定めてから、50年の節目を迎えた。日本では女性が参政権を得て80年、女性差別撤廃条約の批准と男女雇用機会均等法の成立から40年、女性活躍推進法成立から10年。しかし今なお、男女格差は歴然と存在する。
ジェンダー平等において日本が発展途上国であることは、各種調査で明らかだ。特に深刻なのは、経済的格差である。中でも本県は、男女の賃金格差が全国で最も大きい。
2023年6月、日光市で開かれた先進7カ国(G7)男女共同参画・女性活躍担当相会合で採択された日光声明では「賃金格差など経済面での格差解消が喫緊の課題」とされ、無償のケア・家事労働の不平等改善の必要性が盛り込まれた。開催地の名に恥じぬよう、県全体で経済格差の是正に本気で取り組まなければならない。
スイスのシンクタンク、世界経済フォーラムの24年版「男女格差(ジェンダー・ギャップ)報告」で、日本は146カ国中118位だった。G7で最下位であり、推定所得にも「かなりの格差」があると指摘された。
本県に至っては「地域からジェンダー平等研究会」が分析した今年の「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」で、経済分野の指数が悪化し、昨年の全国32位から45位に大きく後退した。
フルタイムで働く男女間賃金格差が全国ワーストとなったことが影響した。本県の労働者のうち、フルタイムで働く男性は9割近いが、女性は5割強にとどまり、その差も大きくなった。
女性の賃金が低い理由として育児などでキャリアが中断されることや、管理職の少なさが指摘される。その背景の一つに、女性が無償の家事労働を担っていることが挙げられる。パートタイム労働者に女性が多いことにも通じる。
男女間賃金格差を是正するには、男性も家事労働に関わることが必要となる。その上で男女とも賃金が上昇することが望ましい。母子家庭や未婚女性の貧困対策として、女性の就労支援も重要となる。
県は新年度、女性従業員の処遇改善に取り組む中小企業に支援金を支給する方針である。県による働き掛けとともに、企業側の積極的な姿勢が問われる。
8日の国際女性デーに合わせ、国連のグテレス事務総長が発表したメッセージには「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)における平等な機会を開放し、男女間での賃金格差を縮小し、ケア労働を巡る課題に対処する行動」を呼びかける一文が含まれている。本県民に向けて発せられた言葉としても受け止めよう。
経済以外の分野でも、ジェンダー平等に向けた不断の努力が必要だ。今年の都道府県版ジェンダー・ギャップ指数で、本県は政治・行政・教育の3分野で指数はやや改善したものの、他都道府県の改善が上回り、政治と教育は順位を下げた。
気になるのは4年制大学進学率の男女差である。男性の54・4%に対し、女性は47・7%で全国順位は前年の34位から38位に後退した。将来の男女平等にも影響する指標だけに、改善に向けた取り組みを促したい。