学校給食の無償化が実現する見通しとなった。2025年度政府予算案の修正を巡り自民、公明、日本維新の会の3党が合意した文書に「まずは小学校を念頭に26年度に実現する」と盛り込まれた。中学校にも速やかに拡大するとしている。
先の知事選で学校給食の無償化を公約に掲げて6選を果たした福田富一(ふくだとみかず)知事にとって、3党合意が追い風になることは間違いない。県単独ではそれに見合う安定財源を見いだすのが困難だからだ。
県内では既に、給食費の減免を独自に行っている自治体がある。負担の平準化は県の役割でもあり、期待は大きい。ただ、この際に議論を尽くすべきだ。給食無償化は子育て支援や少子化対策として本当に有効なのか。論点は残されている。
学校給食法の本来の目的・目標は適切な栄養摂取による心身の健全な発達や、食に関する理解と判断力の育成である。それが近年の物価高騰や少子化の進行が相まって、給食費の無償化が一部の自治体で広まった。
経済的な困窮世帯に対しては、既に生活保護などの制度で基本的に無償化となっている。一方、高所得世帯を含む一律の給食無償化はどんな名目であれ、結果的に対象世帯だけの所得増加をもたらす施策となる。給食本来の目的や目標とは異なる。慎重に判断すべきであろう。
文部科学省によると、23年9月1日の時点で、何らかの形で独自の無償化を実施している自治体は全国の4割に当たる722だった。財源は自己財源を充てているケースが多く、地方創生臨時交付金やふるさと納税を充てているケースもあった。
本県では知事公約を受け、2月から給食無償化に関する県と県内25市町の事務レベル協議が始まった。現時点の概算で、無償化に必要な財源は約84億円という。新年度以降は首長レベルの協議に移して意見集約し、決定する。
国が今後、どのような形で無償化を進めるのか定かでない。地方に応分の費用負担を求めることも予想される。
県内では大田原市が財政圧迫を理由に、過去に導入した給食無償化を撤回した例がある。財政負担に見合った効果がなければ、県民の支持は得られまい。首長レベルの協議では先行事例も参照し、費用対効果を検証してほしい。