南海トラフ地震が発生した際に、大きな被害が想定される太平洋側の10県を早急に支援するため、総務省は応援職員を派遣する自治体を「即時応援県」として事前に決めた。国の中央防災会議は地震発生後の本県の被害は比較的軽微と見込み、同省は本県を香川県の応援県とした。4月から運用を始める。
「ペア」となった自治体は、新年度から合同で災害訓練や被災想定地域の視察、応援に向かう交通ルートの確認などに努める。支援する側と受ける側がお互いに現場の状況を理解しておかなければ、迅速な活動につながらない。本県は香川県と研修や訓練を重ね、実効性を高めるべきだ。
政府は南海トラフ地震でマグチュード8~9級の発生確率を今後30年以内で「80%程度」としている。震度6弱以上の揺れか3メートル以上の津波に襲われる可能性のある地域は、29都府県707市町村と広範囲に及ぶと推定する。
このため同省は、大きな被害が考えられる香川県のほか和歌山、愛媛、宮崎など計10県の支援県をあらかじめ決めた。支援県は日本海側や内陸の関東から選ばれ、被害が特に大きいとみられる静岡や愛知など5県には複数の県や市が直後にサポートに入る。
巨大地震発生後、本県など応援側の自治体は速やかに先遣隊を派遣し、情報収集や応援ニーズの把握に当たる。その上で活動本部が県・市町職員でつくる応援隊を編成し、被災地で避難所運営や罹災(りさい)証明書の発行業務などを行う。
本県も香川県側と意見交換や研修、視察で緊密な交流を重ね、具体的な支援計画作りと訓練に役立てたい。その際、市町単位の組み合わせなども可能か検討すべきだろう。
一方、同省によると栃木・香川両県の県庁間の移動距離は一般道と瀬戸大橋を利用したルートで585キロ、移動時間は時速30キロの車で19時間と見込んでいる。道路の寸断などを想定した複数のルートを確保するとともに、極めて甚大な被害に応じた空路や海路による移動の検討も視野に入れたい。
国は2016年の熊本地震後、被災自治体の首長への助言や国・県との調整を担う「災害マネジメント総括支援員制度」を創設。各県などに育成と登録を呼びかけ、本県は47都道府県で13位の9人が登録する。引き続き人材の輩出・育成が求められている。