県は、被災地への医薬品供給や薬剤師派遣の調整などに当たる「災害薬事コーディネーター」を4月に委嘱、大規模災害への備えを強化する。被災地ではたびたび医薬品の不足が課題として指摘されてきた。研修を積んだ薬剤師に、災害薬事医療の指揮官になってもらうもので、災害関連死の未然防止に期待したい。
東日本大震災では、全国から大量の支援医薬品が配送された。しかし支援物資集積所では、仕分け作業を行える専門知識を持った担当者が不足し、医薬品の整理が大きな負担になった。
津波で薬や「お薬手帳」が流された被災者への対応、慢性疾患を抱えた避難者への調剤業務でも、薬剤師がいない支援チームは医薬品の交付に支障を来したとされる。最悪の場合、災害関連死につながりかねないとして、たびたび指摘される問題だ。
4月から設置する災害薬事コーディネーターは、知事が任命。災害時、県などの保健医療福祉本部に派遣され、被災地のニーズを把握したり、医療品の供給や現地への薬剤師派遣の調整に当たったりする。
手始めに県薬剤師会、県病院薬剤師会の推薦を得て、2人を任命する予定だ。定数はなく、県にも目標人数はないが、大災害時に混乱している中、2人が必ず参集できるとは限らない。継続的に研修会などを開き、より多くの指揮官候補を任命しておくことは危機管理上、必要だろう。
そのためには、県薬剤師会、県病院薬剤師会などと連携した継続的な養成活動が必要だ。万が一、大災害が発生した場合には有機的に活動できるよう、運用面での事前調整も欠かせない。
県はこれまでに、災害時の救護所、避難所などで調剤業務、服薬指導や医薬品管理などの医療救護活動を行う災害支援薬剤師の育成も進めている。現在県内には、研修会で専門知識を習得した災害支援薬剤師が34人いる。
また、糖尿病やてんかんなど定期的な薬剤投与、服薬が必要な患者の被災時対応として、備蓄薬の整備にも着手している。
災害支援薬剤師、備蓄薬など現場で必要な人材や物資支援の差配を大局的に判断するのも、災害薬事コーディネーターの重要な任務である。指揮官が果たす役割は極めて大きい。