18歳までの子どもたちが抱える悩みや思いを受け止める認定NPO法人「チャイルドラインとちぎ」が今春、設立25周年を迎える。民間主体の地道な活動には頭の下がる思いだ。しかし、子どもを取り巻く環境は激変している。末永く寄り添い続けるためにも、相談の「受け手」と呼ばれるボランティアの育成に注力してほしい。

 同法人は長年、毎日午後4~9時に電話相談の受け手を担ってきた。県内の件数は当初300件台だったが、2010年ごろには3千件台に増加。調査方法の違いや携帯電話の普及などで単純比較できないが、その後も毎年千件以上の声に対応している。

 相談は、時に強い物言いや会話にならない訴えもあり、受け手の心労は計り知れない。それでも多くの受け手が続けられるのは、相談時に経験値の高い「支え手」役の人がフォローしている点が大きい。同法人ならではの仕組みが、常に子どもに寄り添う体制を構築したと言えるだろう。

 一方で、急速なインターネット社会の到来やコロナ禍など、四半世紀を経て社会の劇的な変化が起きている。同法人の福本佳之(ふくもとよしゆき)理事長(49)は「学校の人間関係など衝突による怒りや不満を打ち明けた以前と比べ、今は衝突を避けるために一人でいるなど孤独感を抱える子どもが増えた」と相談内容の変化を指摘。18年に対応を始めたオンラインチャットは今や電話を超える割合で、特に中高生の多くが利用する状況だという。

 同法人は経験を積んだ50~60代の女性を中心に、約60人が在籍する点が強みだ。だが研修を重ねても、世代によって子どもの考え方や社会環境が違えば今後の対応に限界が生じる可能性もある。40代以下の世代や大学生など、より相談者の年齢に近い受け手の育成に取り組む必要がある。

 福本理事長によると、ボランティアの養成講座などを受講しても、県央の活動拠点への移動手段や時間で条件が合わず、参加を諦める例もある。財政的な事情で拠点を増やせないにせよ、活動の意義を理解する若い世代が物理的な理由で力を発揮できないとすれば改善が急務だ。

 孤独感を抱える子どもが増えた今、「心の居場所」となる受け手はより存在感を増している。節目の年を契機に、幅広い世代が活躍できる環境づくりに努めたい。