陰謀論の拡散などマイナス効果が指摘されるインターネットのあしき特性の一種「フィルターバブル」は、若年層からの教育で防がねばならない現代の課題の一つだ。

 そのため、昨春の全国学力テストでは、中学3年対象の問題で初めてフィルターバブル現象について考える設問があった。教育現場では、ネット以外の多様なメディアに触れさせ、異なる背景や価値観を持つ人との対話などの体験を深めたい。

 ネット空間では、同じ思考や主義を持つもの同士をつなげやすいという特徴から「集団極性化」を引き起こしやすくなるとされる。集団極性化とは人間の持っている傾向で、集団討議の中でそれぞれ違う意見をやりとりした結果、自身の意見がより先鋭化する場合などを指す。

 集団極性化とネットメディアとの相互作用でフィルターバブルという現象に陥りやすいことが問題視されている。利用者の検索履歴などを分析、学習するコンピュータープログラムによって、利用者の観点に合わない情報からは隔離され、自身の考え方や価値観のバブル(泡)の中に、孤立する情報環境を指す。

 フィルターバブルに陥った人々は「新型コロナウイルスは利権団体が考案したデマだ」などという陰謀論を支持。重要な政治・社会事象の背景や原因を強力な権力者たちの秘密のたくらみだとの説明をうのみにしてしまう。

 防止策として、情報を精査する能力である「メディアリテラシー」を高める必要がある。学齢期からの取り組みが必要で、ネット以外からも情報収集をする習慣が重要だ。新聞や書籍、テレビなどのメディアはネットとは異なる視点や意見を提供する。多様な媒体を活用することで視野を広げ、角度の違う情報に触れる経験が必要だ。

 下野新聞社も新聞の読み方などを伝える出前講座「しもつけ新聞塾」を学校などの公的機関や非営利団体を対象に無料で実施している。メディアリテラシーを学ぶカリキュラムもそろえており、活用してほしい。

 陰謀論を信用して、新型コロナワクチン接種を阻止しようと接種会場に押し入るなどの違法行為を犯した例もある。メディアリテラシー向上の着実な取り組みが、こうした犯罪の未然防止にもつながるはずだ。