さまざまな消費トラブルの相談やあっせんに応じる消費生活相談員は、県民生活の安全・安心を守るために欠かせない。県内の各消費生活センターで、その担い手の確保が困難になりつつある。国、県、市町は関係機関と連携し、相談員の人材育成と処遇改善を図らなければならない。
消費生活相談員は2014年に改正された消費者安全法に基づき、消費生活センターには必ず配置されることになった。国家資格試験の合格者または同等以上の能力を持つ専門職である。
本県では県や市町が設置するセンターが21カ所あり、昨年4月時点で計67人の相談員が勤務する。このうち栃木、鹿沼、日光、小山、下野、野木の6センターは相談員が不足。県と足利、佐野、真岡など11センターは今後、担い手不足が懸念されるという。
相談員が不足している自治体では、相談の受付時間や、消費者教育のための出前講座の開催に影響が出ている。市町に助言や援助を行う県の「指定消費生活相談員」も3人中1人が欠員となっている。
相談員の多くは非常勤の会計年度任用職員として採用され、待遇の低さが人材不足の主な要因とされる。相談員側からは「資格を取っても未経験だとなかなか採用されない」「運良く採用されても研修制度が整っていない」などの問題点も指摘される。結果として若手の養成が滞り、相談員の高齢化が進む。
相談員などの確保や資質の向上は、消費者基本法と消費者安全法で国、県、市町村の努力義務となっている。相談員の育成と処遇改善にかかる財政措置に地域差が生じないよう、国や県は積極的に支援するべきだ。
県は現在策定中の第3期県消費者基本計画(2026~30年度)骨子案に、有資格者の復職支援などを行う方針を盛り込む。未経験者が実務を学びながら資格取得できるような取り組みも求められるだろう。
一つのセンターを複数の市町が共同で運営する広域連携や、一定の基準を満たした民間団体への相談業務委託も、人材確保の観点から検討に値するのではないか。
デジタル化の進展に伴い、新たな手口の悪質商法が次々と発生している。トラブルに遭った消費者を救うため、最前線に立つ相談員の仕事が過小評価されてはならない。