サッカーJ3の栃木SCと栃木シティが対戦する「栃木ダービー」が3月、初めて行われた。本拠地が同じチームが誇りと意地を懸けて戦うダービーはプロスポーツの迫力、魅力を存分に味わえるまたとない機会だ。今季は7月にもう1試合行われる。この貴重な機会をプロにとどまらず本県のスポーツ地域振興の原動力にしたい。
初のダービーは1-1の引き分けに終わったが、最後まで手に汗握る白熱した展開となった。今季のJ3全体でも最多の1万2807人の観客が「チャント」と呼ばれる応援歌で選手を鼓舞し続け、試合終了後はアウェーの栃木シティサポーターが「栃木SC」コールでホームチームに敬意を表するダービーならではの光景も繰り広げられた。
試合後、両チームの監督がそろってダービーの雰囲気を称賛していたのが印象的だった。同一カテゴリーでダービーができるのは北関東3県では本県だけ。全国でも決して多くはなく、県民にとってダービーができることは誇れる財産といえる。
サッカーだけでなく、県内はバスケットボール、アイスホッケー、野球、自転車と多種多様なプロチームが拠点を置いて活動している。プロではないがホッケーやバレーボールのクラブチームも注目を集めるほか、2026~27年シーズンにはラグビーの国内トップリーグチームが拠点を宇都宮市に移す予定だ。
これほど多くのスポーツで、レベルの高い戦いが身近に観戦できる県はまれだろう。県や市町は「スポーツのとちぎ」を積極的にアピールし、地域の魅力を発信するシティープロモーションや移住定住促進に生かすべきだ。
また、スポーツ関係者はぜひ、子どもたちに観戦の機会をつくってあげてほしい。迫力あるプレーを見た経験は、子どもたちの競技力向上などに役立つだけでなく、スポーツ人口の裾野拡大にもつながるだろう。
ダービーの盛り上がりは、県内の他競技のチームにも良い刺激になったはずだ。白熱した試合、気迫あふれるプレーは観客の心を動かす。それこそがファンを増やしていく。何より栃木SC、栃木シティの選手たちがそれを実感したはずだ。将来は両チームがともに昇格し、より上位のカテゴリーでダービーを繰り広げてもらいたい。