京王線・聖蹟桜ケ丘駅(東京都多摩市)は今年3月、開業100周年を迎えた。当初の駅名は「関戸」で現在の名称になったのは1937年。周囲には古戦場の跡や丘陵地公園、昭和初期の近代洋風建築、スタジオジブリ作品の舞台といわれる場所が点在している。(共同通信=松本泰樹)
駅から少し東へ歩き、旧鎌倉街道を南へ行くと「関戸古戦場跡」と書かれた標柱が立っている。この辺りで1333年に、新田義貞軍が鎌倉幕府軍を破る「関戸合戦」があったという。その後新田軍は鎌倉へ総攻撃を開始、幕府は滅亡した。
丘陵と谷からなる「桜ケ丘公園」へは、駅からバスが便利だ。野鳥の声を聞きながら起伏の多い園内を進むと、木立の向こうに鮮やかな黄色の建物が姿を現した。
建築家関根要太郎と蔵田周忠の設計で1930年に建てられた「旧多摩聖蹟記念館」。楕円形のかわいらしい外観で、2022年には近代建築の保存に取り組む国際組織「DOCOMOMO(ドコモモ)」の日本支部が「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」に選定した。
「聖蹟」は天皇が訪問した場所を意味し、元々は明治天皇がウサギ狩りやアユ漁のために当地を訪れたことを記念する施設だった。現在は多摩市が運営し、企画展を行うほか、貸ギャラリーや喫茶サロンも併設している。
聖蹟桜ケ丘は、ジブリ映画「耳をすませば」(1995年)の舞台のモデルとして話題に。駅前で見た案内板の地図を参考に高台へ上った。急カーブが連続する「いろは坂」近くの神社や、その先にある桜ケ丘ロータリー付近などが当該の場所らしい。
坂を下り、最後は駅の北側へ出て多摩川の河原を散策。西の空が少しずつ赤くなっていった。
【メモ】駅西口には、「耳をすませば」に登場する骨董店をモチーフにしたモニュメント「青春のポスト」がある。