「紺野(こんの)さん、ありがとう。ゼネラルマネージャーとして最初の仕事を君に与える。チーム名を考えてほしい。私たちのチーム名だ」

 麻理亜(まりあ)は溜(た)め息をついた。新チーム名の考案。とてつもない大役を押しつけられたような気がした。

 それにしても私がゼネラルマネージャーか。何だか夢を見ているかのようだ。二カ月前までは秋葉原のガールズバーで働いていた東京女子が、なぜか高知の田舎でバスケットボールチームのGMに任命されてしまったのだから。

 酒宴は終わりそうにない。そこかしこから笑い声が聞こえてくる。

     ※

 奨吾(しょうご)は目の疲れを感じ、何度か瞬(まばた)きをした。もう二時間近く、パソコンの前に座っている。背後から床山(とこやま)が声をかけてくる。

「どうでしょうか?」

「うん。よさそうだ」と奨吾は答える。「あとは誤字脱字をチェックするだけでいいだろう。何とか間に合ったな」

 今月末に迫った来年のB3リーグ参加申請。その提出書類のドラフト(草案)が出来上がったのだ。しかも申請期限まであと二週間もある。ここまで辿り着いたことが感慨深い。

 最初は冷やかし程度の思いつきだった。うちの市でバスケチームを作ってしまおう。そんな空想めいた話だったのだが、徐々に形になっていった。そして今では事務所まで開設してしまったのだ。今、奨吾たちも事務局にいる。ほかのスタッフ(元堅魚(かつお)市職員たち)も各々で仕事を進めていた。

「そろそろ練習が始まりますね。見学に行きませんか?」

「うん。そうしよう」

 奨吾たちは堅魚アリーナに向かった。毎週火曜日と木曜日の夜、チームの練習がおこなわれているのだ。奨吾たちがコートに入ったとき、選手たちは各自ウォーミングアップで体を温めていた。ミリッチの姿もある。なぜか竹刀を持っている。