新型コロナウイルスの流行以来、小中高生の自殺が全国で増えている。従来の自殺対策の枠組みに、子どもたちを取り巻く環境を踏まえた対策を加え、教育現場を含めた全県的な取り組みを進めたい。

 小中高生の自殺者は新型コロナウイルスの感染が広がった2020年、全国で前年比100人増の499人となった。24年は過去最多の529人、うち県内は8人だった。

 厚生労働省によると、19~23年の5年間に、県内では計57人の小中高生の自殺があった。人口が同規模の群馬県(32人)、岐阜県(40人)、岡山県(40人)と比べると多く、小中高生世代に占める割合としては、全国で最多という民間団体の分析もある。

 コロナの流行に伴い増加した背景として、友達などとのコミュニケーション不足によるストレスや孤立感、困窮に陥った家庭の影響、ネットいじめなどが指摘される。県内の学校関係者からは、交流サイト(SNS)などで自殺に関する情報が拡散していることを危惧する声もある。

 従来の自殺対策は、中高年男性に焦点を当てていた。県は昨年度、精神保健、福祉などの関係機関の実務者で構成する協議体「県自殺対策プラットフォーム」を設置。中高年の自殺リスクを早期発見するための事業を、新たに行うこととした。

 本年度は、新たに子どもの自殺対策について協議する方針だという。県教委や学校の積極的な関与を求めたい。こども家庭庁は各地で「こども・若者の自殺危機対応チーム」の設置を促しており、昨年度までに長野県など16自治体が実施した。これらの取り組みも参考になるだろう。

 教員対象の自殺予防研修や中高生向けにSNSを活用した相談事業など、既に行われている施策もある。いじめや不登校対策と合わせ、自殺対策を組織的に推し進めていけないか。特にスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーと連携したチームでの対応が、どの学校でも確実に実施される体制づくりが望まれる。

 子どもの自殺は唐突で衝動的な動機が多いとされる。SOSを出せないことも考えられる。こども家庭庁は23年度、要因分析に関する調査研究を行ったが、十分な情報を得られず課題が残った。各都道府県と協力し実態の把握に努め、対策に生かすべきだ。