幹線道路から歩道まで多岐にわたる道路事業を横断的に管理する実施計画「道路づくりプログラム」(2025~34年度)を宇都宮市が策定した。次世代型路面電車(LRT)のJR宇都宮駅西側延伸、バス路線の再編など公共交通と連動した道路整備が進めば、車に過度に依存せずに移動できる交通網の拡大につながり、周辺地域への波及効果も期待できる。事業の過程を市民に丁寧に説明し、効果的な施策を推進してほしい。
人口減少社会での持続可能な都市づくりを目指し、市はネットワーク型コンパクトシティ(NCC)の形成に取り組む。2050年の姿として、暮らしに必要な機能を市内複数の拠点に集約し、公共交通でつなぐ構想を描く。
NCCの実現に向け、市が打ち出すのが「ベストミックス」と呼ぶ交通体系づくりだ。公共交通、徒歩、自転車、車といった交通手段の選択肢を増やし、地域の実情に合わせて利用できるようにする。
選択肢を増やすには、公共交通施策と連携した道路施策が求められる。LRTの導入などまちづくりが大きな転換期を迎える中、従来のように道路事業を個別に展開するのではなく、横断的に進めれば公共交通や人を中心とした交通環境をより効率的に構築できる。市の道路整備を俯瞰(ふかん)した計画を策定し、事業の実効性を高めることは歓迎したい。
計画では「円滑」「快適」「安全・安心」の観点から効果の高い路線を選定し、既に着手している路線の完了を急ぐ。26年3月には、市中心部を囲む「都心環状線」が全線開通する予定だ。新たな幹線道路の誕生により、新たな人や物の流れが生まれる。LRT西側延伸を見据えると、環状線の果たす役割は大きい。
一方、いかなる道路整備でも地域住民の理解が欠かせない。整備に関する情報が行き届かなければ、日常生活に直結する影響への不安や誤解、整備の必要性に対する不信感につながりかねない。
道路は経済活性に欠かせないだけでなく、災害発生時には救急車両の走行や物資の輸送などで重要な機能を担う。市は計画の進行管理と併せ、段階的な整備案も地域住民らに示し、分かりやすい言葉できめ細かく説明すべきだ。将来の交通網をどう充実させていくのか、イメージの共有にも注力してほしい。