トランプ米政権の関税引き上げを巡り、県内中小企業を支援するため県が設置した連絡会議の初会合が先日開かれた。先行きや影響が見通せず、不安を抱える県内事業者は少なくない。そうした声を拾い上げる受け皿を迅速に立ち上げたことは評価したい。これまで以上に連携を密にし、対応することが必要だ。

 本県は県内総生産に占める製造業の割合が全国3位の39・6%(2021年)という「ものづくり県」。県の調査によると、23年度の県内製造業輸出総額は8740億円で、うち輸送用機械器具製造業が4406億円だった。

 日米政府の今後の交渉次第で、県内企業への影響の度合いは変わってくるが、結果によっては大きな打撃を受けかねない。県は交渉の行方を注視しながら、状況を分析するとともに連絡会議で共有した情報を生かし、必要な対策が速やかに打てるよう準備してほしい。

 トランプ政権は、ほぼすべての貿易相手国に一律で10%の追加関税を導入し、品目別では本県の基幹産業でもある自動車に25%の追加関税を発動した。乗用車の関税率は2・5%から27・5%に引き上げられ、県内産業への影響が懸念されている。

 連絡会議では、経済団体や金融機関が会員企業や取引先に実施した聞き取り調査について報告された。現時点では大きな影響は出ていないが、関税の方向性が決まらないため増産・減産の判断ができないなど、今後への不安の声があったという。また幅広い産業への影響を懸念する意見も上がった。

 東京商工リサーチ宇都宮支店が今月上旬実施した調査では、今回の関税政策により6割弱の企業が「業績にマイナスの影響がある」と回答した。県内企業は情報収集に努めながら、中長期的な経営戦略の見直しも視野に入れるべきだ。

 SUBARU(スバル)の自動車生産拠点がある群馬県では、本県同様の対策会議を立ち上げるとともに、知事を本部長とする総合対策本部も設置した。6月をめどに、国への要望などを取りまとめるほか、資金繰りや販路開拓などに関する「支援パッケージ」を打ち出す予定だという。不確実な情勢ではあるものの、本県も必要に応じて明確なメッセージを発信すべきだろう。