那須烏山市の企業版ふるさと納税を活用した里地・里山再生プロジェクトが2024年度で終了した。持続可能な里地・里山の実現に向け、産官学が連携し4年間にわたり、同市の大木須地区で雑草問題などに取り組んだ。放置すれば増え続ける雑草の管理は、人口減少や高齢化が進む社会で大きな課題となる。プロジェクトで得た知見を広げ、対策に生かしてほしい。

 プロジェクトは協賛企業や市、宇都宮大、地域住民らでつくる「里山大木須を愛する会」が展開した。茨城との県境にある同地区は、オオムラサキやホタルの里として知られる中山間地域。過疎化や高齢化、耕作放棄地の増加などが課題となっており、今回の事業は会が提案し始まった。

 取り組みの柱の一つが雑草問題の解決事業だった。耕作放棄地などで実施した雑草管理実証試験では、農薬メーカー約10社が協力。散布時期が違ったり、特定の植物にしか効かなかったりする、さまざまな除草剤を使用した。

 既に農薬登録されている除草剤ばかりで、試験は地域住民らに効果や安全性を伝えることが主になったという。市は「環境への影響を懸念し、除草剤に抵抗のあった住民の意識が変わってきた」としている。同大雑草管理教育研究センターの西尾孝佳(にしおたかよし)准教授は、事業を通して雑草発生予防資材や除草剤の有効性が明らかになったと強調する。

 雑草管理は刈り払いが常とう手段になっている。しかし人口減や高齢化で担い手は減り、事故の危険は常に伴う。特に近年の猛暑下では激務で、安全な除草剤の使用を選択肢の一つとして考える必要があるのではないか。市は適切な除草剤使用の安全性や効率性を市民全体に浸透させる全国に先駆けた取り組みを目指しており、実現してほしい。

 雑草の増加は土地管理の負担や野生鳥獣害リスクの増大につながるほか、不法投棄の温床になる恐れもある。影響は里地・里山に限らない。道路や公園、校庭、水路、公民館。公共地の維持管理にも、人手不足や財政負担が重くのしかかる。

 少子高齢化、人口減少社会の中で雑草対策は後回しになってきた感が否めない。雑草の維持管理は全国各地の問題だ。生態系への悪影響を懸念する声にも真摯(しんし)に向き合いつつ、プロジェクトの成果を広めてもらいたい。