県内の生活保護世帯の高校進学率が全国平均を下回る状態が長く続いている。国の子どもの貧困対策の指標の一つであり、貧困の連鎖を断ち切れるかどうかの重要な鍵となる。自治体や学校は学習支援の強化などを通して、進学率向上を図るべきだ。

 全国の高校進学率は全体で99%であり、ほぼ全入時代と言われる。だが生活保護世帯の子どもは取り残されているのが現状だ。

 生活保護世帯の進学率の全国平均は10年以上、90~93%で推移している。本県はこれを上回ったことはなく、2023年度は過去最低タイの83・3%に落ち込んだ。24年度(暫定値)は85・2%とわずかに上昇したものの、全国平均には及ばない。

 県は本年度から5年間の「こどもまんなか推進プラン」の目標指標の一つに、生活保護世帯の高校進学率を設けているが、目標値は明記せず「上昇を目指す」としている。従前より悪化した指標が上昇しても改善にはならない。「全国平均並みに引き上げる」など、より踏み込んだ目標を掲げるべきではないか。

 本県は生活困窮者自立支援法に基づく学習支援事業に、施行当初から全市町で取り組んだ全国でも数少ない県である。生活保護世帯を含む困窮世帯の子どもの高校受験対策などを支援する取り組みで、貧困の連鎖を断ち切ろうという機運が高まっていた。

 現在も矢板市を除く市町で実施されている。矢板市は21年度に移行した別の事業で、引き続き困窮世帯への学習支援を行っているという。

 しかし肝心の子どもが事業に参加しないことには、学習支援につながらない。会場への送迎を行うなど工夫している自治体もあるとされるが、最も重要なのは参加を促すための働きかけだ。

 ある支援者は、長引く物価高などの社会不安が渦巻き、ただでさえ生活が厳しい中、進学を目指す意欲が低下していることを懸念する。

 まずは生活保護世帯の子どもと接点を持てる立場にある県や市町のケースワーカー、小中学校教員らの働きかけが必要だろう。学習支援団体や民生委員・児童委員など地域との連携は欠かせない。

 高校授業料は無償化され、利用できる支援制度も増えている。これらを最大限活用できるよう、きめ細かな情報の周知や助言もしてほしい。