今年の春闘は、昨年を受ける形で賃上げの流れが続いた。県内の中小企業では金額、率とも前年を上回る状況である。持続的な賃上げ実現に向け、県は本年度予算で支援策を講じている。
一方で、トランプ米政権の関税措置の影響が見通せず、来年の賃上げを見送る方針を示唆する企業もある。食料品を中心に物価高が続いているだけに、行政の支援は欠かせない。実効性のある取り組みで中小企業を下支えしてほしい。
連合栃木の春闘第2回集計結果(4月4日)によると、本県の平均賃上げ額は1万5674円、賃上げ率は5・28%。中小企業は賃上げ額1万4661円、賃上げ率は5・36%だった。大企業との賃上げ格差が課題となる中、この時点では率は大企業を上回った。
県内中小企業の賃上げを定着させようと、県は2024年度補正予算で、5%の賃上げと企業内男女間格差の是正につながる取り組みをした企業に支援金を支給する施策を始めた。女性管理職比率の改善や女性の職種・雇用形態転換などを行った企業に、従業員1人当たり5万円、1企業最大100万円を支給する。
本県は男女間の賃金格差が全都道府県で最も大きい。格差是正は大きな課題で、解決に向けた支援策はさらに加速させるべきだ。
中小企業は大企業に比べ経営体力が相対的に弱く、物価高の中で賃上げを定着させるには価格転嫁などのハードルもある。さらに持続的な賃上げ実現には収益力強化が不可欠だ。企業はイノベーションを起こすなどして生産性の向上を図ることが求められる。
収益力強化に向けても、県は支援に乗り出す。東京圏の企業との交流や連携を後押しするほか、大学や研究機関などと連携して取り組む新技術開発などに対して助成を行う。企業が活用しやすい仕組み作りや働きかけも必要だ。
また、半導体分野の人材育成も支援する。半導体は成長が期待でき、県は企業に新分野展開のきっかけにしてもらいたい考えだ。半導体関連企業の誘致も含め、集積地形成などの成果を期待したい。
物価高に負けない賃上げを継続するには、長期的な支援が必須だ。県内中小企業の地力を強化するため、県には今後もさまざまなアプローチを模索してほしい。