自転車をそのまま列車内に持ち込める「サイクルトレイン」を導入する鉄道が、全国各地で増えている。国土交通省によると、2020年度は94路線だったが、23年度には1・6倍の152路線に増えた。

 地域住民の利便性向上や、観光振興などの目的が背景にある。特に利用者減に悩むローカル線と親和性が高い。本県での普及率は高くはないが、今後伸びる可能性はある。先行事例を参考にするなどして、需要開拓につなげたい。

 一般的に自転車を列車に持ち込む場合、分解して専用のバッグに入れる必要がある。しかしサイクルトレインでは、分解が困難なシティーサイクルや電動自転車でも持ち込める。到着駅から目的地までの「ラストワンマイル」をつなぐ2次交通としての役割が期待できる。

 鉄道事業者にとっても自転車との連携で輸送量や利用圏域の拡大が期待できる。導入コストは比較的安く、駅周辺に駐輪場を整備しなくてもよいというメリットもある。

 身近な例では群馬県の上毛電鉄が参考になる。03年からサイクルトレインを運行し、年間約4万人が利用。朝ラッシュ以外の時間帯なら、そのまま無料で持ち込みできる。一部の駅では、利用客向けにレンタル自転車を無料で貸し出している。観光客向けにはサイクルトレインを利用したツアーも企画している。

 本県では東武日光線と同鬼怒川線の一部区間、野岩鉄道でサイクルトレインが導入されているが、定着しているとは言い難い。

 このうち野岩鉄道によると、利用客は「月に1人いるかどうか」の程度。事前予約制で利用列車や乗降駅が限られている点などが、普及を妨げているようだ。利用増に向けた周知徹底も課題という。

 県は20年3月に県自転車活用推進計画を策定した。この中でサイクルツーリズムを成長産業として育成する方針を示しているが、サイクルトレインは「導入に向けた検討」にとどまっている。

 最近は次世代型路面電車(LRT)のライトレール線、JR烏山線でも実証実験が行われて注目を集めた。国は先進的な事業には補助制度を設けるなどして支援している。県の計画は本年度で終了する。次期計画ではサイクルトレインも支援策を打ち出し、普及を後押してほしい。