病気や障害などで援助が必要な親や子ども、きょうだいを世話する人を「ケアラー」(ケアする人)と呼ぶ。中には四六時中、見守りが必要で、心理的・身体的ストレスを伴う場合や、ケアのために仕事を辞めざるを得ず、経済的困窮に陥ることもある。
こうしたケアラーを支援するため、関係機関の連携のポイントなどをまとめた県の「ケアラー支援の手引き」が完成した。県ケアラー支援条例と県ケアラー支援推進計画に続き、手引ができたことにより、県内のケアラー支援の体制整備に向けた取り組みが本格始動する。手引の周知と活用の徹底が求められる。
ケアラー支援の窓口は一つとは限らない。自治体をはじめ介護保険や障害者福祉サービスなどの事業者、医療機関、福祉事務所、ヤングケアラーの場合は学校など、関係機関の連携が不可欠となる。
手引は県内の支援関係者や当事者、有識者の意見を基に作成した。ケアラーを取り巻く現状から、支援が必要な人に気付くためのポイント、関係機関の役割、役に立つ公的サービスや制度などの情報を盛り込んだ。さらに当事者らの生の声も掲載しているのが特徴だ。
手引は県のホームページで誰でも見ることができる。団塊の世代が後期高齢者となり、50代の団塊ジュニア世代が介護を担う年代となる。働きながら介護をするワーキングケアラーが増えることは間違いない。企業にも手引の活用を促したい。認知症サロンや子ども食堂などの民間支援団体にも広めれば、さらなる支援の充実が期待できる。
当事者向けに支援情報をまとめた特設サイト「とちけあ」も完成した。どんな支援があるのか知っておけば、いざというときに安心できるだろう。まだケアラーではない県民にも見てほしい。
日本では「家族の世話は家族がするのが当然」という意識が強い。そのため、周囲に助けを求めることをためらうケアラーも少なくない。相談窓口があることすら知らない可能性もある。「介護疲れ」を理由にした虐待や殺人も後を絶たない。悲惨な事件を防ぐためにも、ケアラーを孤立させないことが重要だ。
自治医大を中心に、ケアラー支援システムの開発を目指す研究プロジェクトも進む。手引を基に、本県の支援基盤を強固にしていきたい。