災害発生時に電気自動車(EV)などが優先的に充電できる「地域電源供給拠点」の整備が県内で進んでいない。初期コストがネックになっているとみられ、23日時点で目標数の1割程度にとどまっている。
災害などにより大規模停電が発生した際、EVが避難所へ電力を供給する役割を担うだけに、拠点整備は大きな意味を持つ。県は拠点増に向け、民間事業者などへの働きかけをこれまで以上に強めるべきだ。コストの問題はあるものの、事業者側も趣旨を理解し前向きに検討してほしい。
拠点整備のきっかけは、千葉県で大きな被害が出た2019年9月の台風15号による大規模停電だ。東京電力管内では最大93万戸、うち千葉県で最大約64万戸が停電し、復旧まで2週間要した地域もあった。停電の影響で命を落とす人もいた。
そうした災害時のレジリエンス(回復力)を高め、脱炭素も推進することを目的に、県が21年度から整備事業を始めた。拠点では、災害時協力車登録制度に登録するEVなどが優先的に充電できる。
事業者は県から補助を受け、再生可能エネルギー由来の電力などを使用する急速充電器を購入する。充電器設置後に電源供給拠点として活用される。しかし再エネ由来という条件では、太陽光パネルの設置などコストがかかるため、22年度までの制度利用はゼロだった。
そのため県は23年度、国の補助との併用を認めるなど購入補助の要件を一部緩和。24年度からは、使用電力を再エネに限定しない形で供給拠点の登録制度を始めた。その結果、拠点は6カ所となったが、25年度末までの目標50カ所に遠く及ばない。
県は今後、登録制度をメインに登録数を伸ばしたい考えで、急速充電器を設置している事業者に呼びかけていく。既に十数カ所設置する事業者と調整を進めているというが、加速が必要だ。
一方、脱炭素の視点からは、再エネ由来の拠点を増やすことが望ましい。補助制度を利用した事業者はこれまで1社のみ。急速充電器のほか、これに必要な自立型パワーコンディショナーの補助もある。事業者によってさまざまな事情があるのは理解できるが、地域貢献の観点から工場新設や設備投資の機会に検討してほしい。