「桜川」(辻善兵衛商店、真岡市)技術や信頼の証明に

 

 11年連続の金賞となった。杜氏(とうじ)でもあり、実質1人で酒を造る辻寛之社長は「本当にうれしい。技術の証明や信頼につながる」と胸を張る。

 原料米は兵庫県産の山田錦で、精米歩合は40%。鬼怒川水系からくみ上げた軟水仕込みで、芳醇(ほうじゅん)かつ上品な味わいが特徴だ。

 昨夏の猛暑の影響で酒米が硬く「経験したことがないくらい砕けやすく、水分調整がかなりシビアだった」と振り返る。県産業技術センターなどの助言も受け、穏やかな香りと柔らかな口当たりに。例年に比べ「味の角」が取れ、親しみやすい自信作となった。

 113回の歴史ある全国新酒鑑評会は、辻社長にとって特別な存在だ。「大吟醸は日本酒の技術の頂点。来年はさらに良い酒を造りたい」。伝統的な製法の「生酛(きもと)造り」での金賞への挑戦など、探究心は尽きない。

「大那」(菊の里酒造、大田原市)普段の酒造り「間違っていなかった」

 

 2004年の「大那」立ち上げから金賞受賞は今回で2年連続6回目になる。

 阿久津信社長は「大那のレギュラー酒を造る技術の延長線に出品酒がある。その出品酒が金賞に入ったということはレギュラー酒の造りが間違っていなかったということを確信でき、非常にうれしい」と喜ぶ。

 会社で一番喜んでいるのは従業員だという。従業員は、いま自分が仕事としておいしい酒を造っているのかと、時に疑心暗鬼になる。「それが結果で表れたのですからうれしいですよ」

 金賞酒は兵庫県特A地区の山田錦を40%まで磨いて造った純米大吟醸。米が溶けず、管理が大変だったが、「ピュアできれいな、研ぎ澄まされた感じの味わいになった」と表現する。

 「大田原の米と水を使った日本酒の価値を上げ、とりわけ国内の若い方に日本酒のおいしさ、魅力を伝えていきたい」

「忠愛」(富川酒造店、矢板市)愛情込めて、甘みを引き出す

 

 2019年度以来の金賞。受賞した「純米大吟醸 忠愛」は、栃木県産の山田錦を35%まで磨いた。竹之内博司杜氏は「栃木県産米を使用した純米大吟醸で金賞を取れて、とてもうれしい」と静かに喜びをかみしめた。

 特にこだわったのが味わい。最近は猛暑の影響で堅い米が多く、溶けづらいため、甘みの成分であるグルコース濃度を高めるのが難しいという。だが、鑑評会ではグルコース濃度が高いお酒が評価されやすい傾向にあるため、甘みを引き出すことに挑戦した。

 袋をつるして、酒米の重みで絞り出す製法。「芳醇な香りで甘みのある味わいに仕上げることができた」と竹之内杜氏。

 ラベルには大きな「愛」の文字。富川栄子社長(69)は「愛情を込めて『忠愛』をつくり、今後も長くお客さまに愛されるお酒にしていきたい」と意気込んだ。