東京ドームで歌うサザンオールスターズの桑田佳祐(西槇太一氏撮影)

 東京ドームのステージでパフォーマンスするサザンオールスターズ(西槇太一氏撮影)

 東京ドームのステージでパフォーマンスするサザンオールスターズ(西槇太一氏撮影)

 全国ツアー「THANK YOU SO MUCH」でのサザンオールスターズ(西槇太一氏撮影)

 サザンオールスターズのアルバム「THANK YOU SO MUCH」

 東京ドームで歌うサザンオールスターズの桑田佳祐(西槇太一氏撮影)  東京ドームのステージでパフォーマンスするサザンオールスターズ(西槇太一氏撮影)  東京ドームのステージでパフォーマンスするサザンオールスターズ(西槇太一氏撮影)  全国ツアー「THANK YOU SO MUCH」でのサザンオールスターズ(西槇太一氏撮影)  サザンオールスターズのアルバム「THANK YOU SO MUCH」

 5人組ロックバンド「サザンオールスターズ」が、13カ所26公演に及んだ全国ツアー「THANK YOU SO MUCH!!」の千秋楽を東京ドームで迎えた。

 チケットは完売。この日は全国各地での映画館でライブビューイングも実施され、ツアー会場と映画館で合計約75万人を動員した。(共同通信=團奏帆)

【(1)「延長したーい!!」】

 5人を待ち望んで早くも熱を帯びた会場が暗転すると、サポートメンバーに続いてパーカッションの野沢秀行、ベースの関口和之、キーボード&ボーカルの原由子、ドラムの松田弘が現れる。最後にゆったりと歩いて出てきたボーカル&ギターの桑田佳祐を大歓声が迎えた。

 幕開けは、ライブでめったに歌わない「逢いたさ見たさ 病める My Mind」。ギターをかき鳴らしてままならぬ恋模様を歌う桑田の味のあるしゃがれ声は、男の色気と哀愁に満ち、胸が苦しくなる。

 だが、感傷的な気分もそこまで。曲終わりに桑田が「サンキュー、ソー、マッチ!」と叫べば、3月のニューアルバム収録のクールなロック「ジャンヌ・ダルクによろしく」が始まり、銀テープが華々しく客席へと放たれた。「ありがとう東京ドーム! おかげさまで千秋楽。今日で終わっちゃう…延長したーい!!」。初っぱなのMCから桑田は絶好調。カメラに大きく寄ってみせるサービスも忘れない。

 裏声を美しく響かせた「せつない胸に風が吹いてた」、波音から始まる「海」、「神の島遥か国」と立て続けに披露した各年代の名曲を締めくくったのは、「愛の言霊 Spiritual Message」。火柱と赤い光に彩られ、万華鏡を思わせる映像が妖しい夜を演出する。桑田のシャウトに、“ハラボー”のハモリが心地よく響いた。

【(2)制作に熱、アルバム発売延期も】

 「今回のツアーは1月から。当初まだアルバムが出来上がってなかったんですけど…」。切り出したのは、3月にリリースした、10年ぶり、16作目のオリジナルアルバムのこと。“制作に熱が入って”、当初昨冬を予定していた発売時期が一度延期になったのだ。

 ツアータイトルと同名のこのアルバム「THANK YOU SO MUCH」には、名前の通りさまざまな相手への感謝が込められた。1978年のデビュー以降奏でてきた全音楽の魅力を詰め込み、全身全霊を傾けたような多彩な曲が並ぶ。「悲しみはブギの彼方に」はなんとデビュー前に作ったと言うのだから驚きだ。

 そんなアルバムから、2024年元日の能登半島地震の被災地へと思いを寄せた「桜、ひらり」を歌唱。歌詞の端々に往年の名曲のフレーズをちりばめた「神様からの贈り物」では、桑田が憧れたスターやミュージシャンら“エンタメの先人”への尊敬の念を歌い上げ、ステージの背景に坂本九、島倉千代子、永六輔らを映し出した。

 人間の欲望が引き起こした異常気象や戦禍を憂う「史上最恐のモンスター」では、軽やかな歌声に魂を揺さぶるメッセージが宿る。デビューした頃の「別れ話は最後に」、90年代の「ニッポンのヒール」などを経て「恋のブギウギナイト」まで駆け抜けた。

【(3)「アルフィーより年下です!」】

 実はツアー中、桑田と原がコロナになり、原は腰の手術も経験。満身創痍の内情を明かしつつも、5人の表情はどこまでも晴れやかで楽しそうだ。桑田から「毛ガニさん」と愛称で呼びかけられた野沢は「みんなのパワー、愛情、フィーリング。全て俺は受けます!」と気勢を上げた。

 「おかげさまで、来月でデビューしてから47年。THE ALFEEより年下です。まだまだ上がいるからやめられません!」。桑田は、74年デビューの先輩を挙げつつ、サザンの終わらない旅路を誓った。

 客席の熱をあおるかのように、ここからはオールタイムベストとも言うべき名曲のオンパレード。桑田のハスキーボイスは、よりセクシーさを増していく。

 「マチルダBABY」では、バーン!とど派手に火薬が鳴り響き、「ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND―NEW DAY)」が続く。そのままの流れで、“エロス3部作”の一つ「マンピーのG★SPOT」へ。水着のダンサーが踊り狂い、ギターがぎゅんぎゅん鳴る中、「ウスバカゲロウ」と書いた名札を胸につけた桑田が挑発的に歌い上げた。

【(4)最後は“原点”のあの曲】

 別れを惜しむアンコールでは、東京の明治神宮外苑の開発をきっかけに制作された「Relay 杜の詩」、原の爽やかなキーボードに導かれた「希望の轍」で胸を熱くさせる。そして最後はやはり、デビュー曲「勝手にシンドバッド」。サンバダンサーや読売ジャイアンツマスコットのジャビットくんがステージに入り乱れる中、桑田はあっけらかんと歌う。切なさも、魂揺さぶるメッセージも、突き抜けたエロスも妖しさも。全てを併せ持っているからこそのサザンだ。

 何度も感謝の言葉を口にして「また、会おうね」と客席に呼びかけた桑田は、名残惜しそうにステージを去って行った。