本県の酒蔵が2024酒造年度(24年7月~25年6月)に製造した清酒が、全国新酒鑑評会で9点金賞に選ばれた。金賞酒の数は全国5位で、出品数に占める金賞の割合は39%。ここ数年、高い割合を維持し、全国的にも上位に位置している。酒造技術のレベルの高さを改めて証明したと言える。

 本県清酒が高い評価を得られる背景には、04年に創設された「下野杜氏(とうじ)」制度の定着がある。面接や論文もある独自の試験制度により資格が得られ、見識、実務ともに認められた者が合格できる。

 酒造りを支えるのは、酒米や醸造の技術に精通した杜氏だ。現在27人が各蔵元で働く。今後も数を増やして底上げしたい。それぞれが切磋琢磨(せっさたくま)し技術を磨き、より良質な「栃木の酒」を追求してほしい。

 新酒鑑評会を主催する酒類総合研究所(広島県)によると、今回は全国から809点が出品された。入賞は410点で、うち金賞は202点。金賞が最も多かったのは福島県と兵庫県の16点で、新潟県の15点、長野県の12点と続いた。本県は秋田、宮城両県と並ぶ9点で5位タイだった。

 金賞酒の数は昨年も5位で、近年は一桁台の上位に位置している。また惣誉酒造(市貝町)が2000酒造年度以降19回受賞しているほか、辻善兵衛商店(真岡市)の11年連続受賞など、高品質な酒を継続的に製造できる力を持つ酒蔵の存在も、本県のポテンシャルの高さを示している。

 ただ、原材料費の高騰など、酒造業界を取り巻く環境は厳しい。主食用米の高騰により、酒米も値上がりしている状況だ。県酒造組合によると、24年産酒米は価格が前年より1割ほど上昇したという。

 25年産については、酒蔵の要望通りに酒米を栽培することが決まったが、価格は今後、協議を進めるとしている。現在の情勢では、さらに上昇する可能性もあり、組合は先月、県に酒造業者への支援を求める要望書を提出した。日本酒は、製造原価に占める酒米の割合が非常に高く、原料高騰に伴う価格転嫁にも限界があるという。

 先日の通常総会でも、国や県に財政支援などを求める要望書の提出を緊急動議として決議した。業界の強い危機感を受け止め、伝統的酒造りの存続へまず県が率先して支援策を講じるべきだ。