自治会の加入者を増やし、地域活動を活発にすることを目的とした宇都宮市の「自治会条例」が施行された。自治会活性化に特化した条例の制定は、2022年度に施行された那須塩原市に次いで県内2例目となる。住民の理解を促進させ加入者増の足掛かりとし、積極的な施策を打ち出していきたい。県都の取り組みが同じ悩みを抱える他市町のモデルケースになれるのかという点も注目される。
宇都宮市によると、自治会加入率は1981年度の92%をピークに下降線をたどり、2024年4月時点で61・2%にまで落ち込んだ。加入世帯数は横ばいの約14万だが、マンションなど集合住宅の増加で総世帯数は増えており、加入率を押し下げている。
今回の条例は、防災・防犯や環境美化へ向けた市民、自治会の役割のほか、集合住宅入居者の橋渡し役を担う住宅関連業者らの役割も明記している。これまでは自治会に関わる規定がなく転入者を勧誘しづらいという課題があったが、市の担当者は「シンボルとなる条例ができたことで、加入を呼びかけやすくなる」と効果を期待する。加入はあくまでも任意のため、今後は勧誘の際に住民を納得させる仕組み作りが重要になる。
自治会加入者増を阻む大きな要因となっているのが、割り当てられる役職や会費への負担である。「自治会は面倒」というイメージを払拭するため、まずは負担軽減を最優先に環境整備を図りたい。
本格検討したいのが、運営のデジタル化だ。市内では推進する自治会も増えてきているという。オンライン会議や回覧板のLINE活用といった省力化は、若年層の理解を得やすい。会費徴収に電子決済を導入すれば、集金の手間や現金管理のリスクが大きく軽減されるだろう。課題はシニア世代を巻き込んで推し進められるかだ。
地域の実情に合わせた対策も重要。マンションの多い地域や一戸建てが多い地域、農村地域では抱える課題も異なる。新旧住民や外国人など、さまざまな人が参加しやすい運営ルールの構築に注力すべきだ。
市は本年度、予算措置を講じて自治会費を集金する際の口座振替導入の支援、大規模分譲住宅向けの加入支援、退会抑止のための負担軽減支援などに努めるという。実効性を注視したい。