働きやすい職場環境づくりとして、全国の自治体で「週休3日制」を導入する動きが広がっている。宇都宮市は本年度、原則全職員を対象にフレックスタイム制と選択的週休3日制を本格導入した。トータルの労働時間や給与水準は変わらないまま、育児や介護といった事情に合わせて柔軟に働き方を選べるのは有意義である。一方、市民サービスの質を低下させてはならない。市はノウハウを蓄積しながら、制度の浸透と市民サービスの維持・向上を両立させるべきだ。
選択的週休3日制は、国家公務員に本年度導入されたほか、一部で試行していた県は6、7月に全庁で試験導入する。2022年度から試行を重ねていた市は、昨年度全職場に拡大。課題改善を図り、今春から本格導入した。
市は、職員が必ず勤務するコアタイムを午前10時~午後4時に設定する。その上で午前7~10時の間に始業時刻、午後4~9時の間に終業時刻を15分単位で柔軟に設定できるようにした。1日の勤務時間は最短5時間、最長10時間。4週間の総労働時間155時間を維持すれば、勤務時間を弾力的に割り振ることができ、週休3日が可能になる。
対象は隔日勤務の消防職員などを除く2739人(4月1日時点)。うち5月26日時点でフレックスを利用したのは221人(8・1%)、週休3日は85人(3・1%)。育児や介護での利用だけでなく、家族との余暇を充実させた人もいた。人材の流動化が進む中、ワーク・ライフ・バランスの改善は優秀な人材の確保・定着に向けた大きなアピールポイントとなる。仕事の能率とやりがいの向上も期待でき、導入効果を市民サービス向上に反映してほしい。
課題は制度を利用しやすい職場とそうでない職場がある点だ。窓口業務や人員が限られた体制では制約が伴う。業務の性質にかかわらず利用できる公平性も求められる。そもそも制度利用を申請しづらい空気があってはならない。
休日が増えた影響で業務が滞ったり、労働時間が長くなって能率が下がったりしないよう、デジタルトランスフォーメーション(DX)を積極的に推進すべきだ。制度が自治体で浸透すれば、人材確保や離職率の低下を目指す民間企業が追随する可能性もある。社会全体の多様なライフスタイルの実現につなげたい。