プロツアー公式戦の日本プロ選手権などで競技委員長の重責を務めるプロゴルファーが県内にいる。宇都宮市在住の天野克彦(あまのかつひこ)プロ(52)を紹介したい。

日本プロゴルフ協会PGAツアー競技管理委員会の専門競技委員の天野克彦さん
日本プロゴルフ協会PGAツアー競技管理委員会の専門競技委員の天野克彦さん

 広島県出身で高校駅伝の強豪校、世羅高卒。プロゴルファーを志し22歳で本県に来て、大田原市の千成ゴルフクラブに所属している。日本プロゴルフ協会ツアー競技管理委員会の専門競技委員で男子レギュラーツアー、シニアツアーで競技委員を務める。

 この天野プロが競技委員長を務めた今季メジャー初戦、日本プロ選手権(5月22日から4日間、岐阜・三甲GC谷汲C)で注目を集めた。第3ラウンドを終え通算14アンダーの単独トップでホールアウトしていたショーン・ノリス(南アフリカ)のスコアが、2罰打を科され12アンダーに修正された。裁定を下したのが、天野委員長だった。

 14番パー5、グリーン上でのノリスのプレーについて、テレビ中継の視聴者から大会側に電話があった。マークをした時にマーカーを球の真下まで入れており、リプレースする際、球がカップ方向に近づいたとの指摘だった。誤所からのプレー(規則14・7)となり2罰打が下され、パーからダブルボギーに修正となった。

 天野委員長は記者会見で詳細を報告した。スコア提出後にノリス本人も同席した上でテレビ映像を拡大画面で確認し、故意ではないが誤所であることを認めたという。天野委員長によると「ノリス選手は納得していた。『分かった』と言っていた」という。

主に日本プロゴルフ協会(PGA)主催の大会で競技委員長を務める天野プロ=大田原市の千成ゴルフクラブ
主に日本プロゴルフ協会(PGA)主催の大会で競技委員長を務める天野プロ=大田原市の千成ゴルフクラブ

 視聴者からの指摘は、必然的に中継映像で多く捉えられる優勝争いを演じる選手や注目選手に偏る。2017年12月には、世界のゴルフルールを統括するR&Aと全米ゴルフ協会(USGA)がテレビ視聴者からの指摘に基づきルール違反の裁定を行う運用をやめると発表し、翌18年1月1日から適用することになった。

 そのことについて、天野委員長は「そこに関しては各団体で違いがある。われわれ(日本プロゴルフ協会)は、われわれのコミッティー(委員会)として会議をし、確認をして判断」と説明した。さらに「全てに対して視聴者の方々の主張を聞くということはないが、疑義が出てきたとなると、調べることはしなければならない」と付け加えた。

 また、今回のケースではコースを巡回している競技委員がノリスのプレーを見ており、「特徴的なマークの仕方をしていたので、少し気になっていた」ことも大きいという。

 1打で数百万円が動くプロの試合。その舞台でのジャッジは想像以上にプレッシャーがかかる。重責について「ルールに背いた選手に罰打など、確かに厳しい判定をしなければならないこともある。ただ競技委員は選手の敵ではない。失格にならないように助ける立場でもある。大前提はプレーヤーが『規則に従い、ゲームの精神の下でプレーする』ということ」と言い切る。

 5月末に宇都宮市のイーストウッドCCで開催された男子のシニアツアー「すまいーだカップ」で、タカ坊は天野プロに遭遇した。開口一番、「(日本プロは)大変だった」と笑っていた。

日光CCで2021年に開催された男子国内メジャー、日本プロ選手権で大会競技委員長を務めた天野プロ
日光CCで2021年に開催された男子国内メジャー、日本プロ選手権で大会競技委員長を務めた天野プロ

 「人生の最終目標」を「全米プロ、全米オープン、全英オープン、マスターズの4大メジャーで競技委員として立ち会うこと」と語る。165センチ、75キロで愛嬌(あいきょう)のある天野プロ。宇都宮市にプロゴルフ界の屋台骨である競技委員がいることを誇りに思う。