生涯にわたる歯と口の健康づくりの指針となる「県歯科保健基本計画」の3期計画が本年度スタートした。2029年度までを期間とし、乳幼児期や中年期などライフステージに応じた病気の予防策などを通じ健康寿命の延伸も図るのが狙いである。

 高齢になり歯と口腔(こうくう)機能の衰え(オーラルフレイル)が進むと、低栄養や誤嚥(ごえん)性肺炎の危険性が高まり、症状が進むと要介護状態へ移行するリスクも生じる。計画の強化ポイントの一つであるオーラルフレイル対策とともに、歯科健診の受診率向上など各年代の実態に応じた切れ目のない施策を県は展開すべきだ。

 おおむね65歳以上の高齢期に入ると、歯の喪失や唾液量の減少、食べ物を飲み込む機能の低下といったオーラルフレイルが見られるようになる。食事で十分な栄養が取れなくなったり、細菌の繁殖を抑えるなどの役割を果たす唾液の減少で虫歯や歯周病への注意が必要になったりする。

 80歳になっても20本以上自分の歯を保つ「8020運動」を国は推進している。しかし22年度の県内の該当者は47・7%と国平均の51・6%を下回っている。計画で県は29年度までに50%以上の目標を掲げている。

 対策として県は、食べ物をよくかみ、飲み込むために必要な筋力を維持向上させるオーラルフレイル予防体操などの普及や、全国平均を下回る歯科健診の受診率アップと啓発強化を打ち出している。関係機関や市町と連携を図り、ぜひ目標を達成してほしい。

 一方、虫歯のある県内の小中高校生は22年度が小学生41・3%、中学生31・9%、高校生40・2%と、いずれも全国平均を数ポイント上回っている。

 虫歯は歯周病と並び歯を失う大きな原因である。フッ素入りの洗口液や歯磨き剤を指すフッ化物は、虫歯予防に効果があるとされる。幼児や児童生徒にフッ化物を塗布するなどの事業に取り組む市町は20に上り、県は計画で全25市町での実施を目指す。歯科保健指導の促進とともに、県は購入費用の助成なども検討すべきだろう。

 年代を問わず日頃の丁寧な歯磨きや歯間清掃用ブラシなどの活用、そして疾患の早期発見・治療にもつながる定期健診は欠かせない。10日まで「歯と口の健康週間」である。自身の歯と口にしっかりと向き合う機会にしたい。