人手不足が深刻な介護現場の課題解決に向けた取り組みを検討するため、県は本年度、関係団体による「県介護現場革新会議」を新たに設置した。現場の声を聞きながら、介護テクノロジーの活用などによる業務改善支援を重点的に進めるとしている。7月には事業者からの相談に応じる「介護生産性向上総合相談センター」を開設する予定だ。

 介護テクノロジーの導入を巡っては、積極的な事業所と、消極的な事業所の二極化が指摘される。施設系と訪問系などのサービス形態によっても、使える技術は異なる。それぞれの実態に合わせた、きめ細かな支援が求められる。

 介護テクノロジーは、介護記録や情報共有のために使用する端末やソフトウエア、ベッドからの起床や転倒などを検知する見守りセンサー、移動や入浴を補助する介護ロボットなどが含まれる。

 県の推計によると、2026年度に県内の全市町で必要となる介護職員数は3万5271人なのに対し、実際の職員数は2万7196人の見込みで、充足率は77・1%。全国で最低の結果である。

 県高齢対策課は従来の人材確保策と並行して、限られた人員で効率的に介護現場を運営できるよう、介護テクノロジーの活用を促す考えだ。

 介護ロボットなどを導入する県内の介護事業所の割合は今年1月現在、37・4%で、全国平均の31・6%を上回る。千葉、宮城、鳥取、京都に次いで5番目に高い。

 ただ導入率をサービス形態別に見ると、老人福祉施設などの施設系では53・8%と過半数なのに対し、通所系は33・2%、訪問系は36・0%と、ばらつきがある。

 新たな機器を導入しても、使い勝手が悪く活用に至らなかったり、導入のための補助金を充てても、必要な費用を負担できなかったりする事業者もいる。小規模で人手不足に悩む事業所ほど、導入する余裕がないというジレンマがある。新たに開設する相談窓口では、経営面の相談にも応じる必要がある。

 導入するからには、新たな技術を使いこなすスキルを、一人一人の職員が身に付けなければならない。導入する目的意識も大切だ。介護テクノロジーを、職員の負担軽減だけではなく、介護の質と就労意欲の向上に結びつけることができれば、人材確保への道も開けるだろう。