日光宇都宮道路(日光道)について、県が料金を引き上げる方針を示した。2034年5月までとしていた料金徴収期間も延長する考えだ。15年度以降、単年収支は赤字が続いており、サービス水準の維持や耐震・老朽化対策を講じるためには必要だと判断した。
道路の安全性を維持することは当然だ。だが、日光道の無料化が見送られるのは今回で3度目になる。加えて料金引き上げである。なぜ料金引き上げが必要なのか、県には丁寧な説明が求められる。
日光道は旧日本道路公団が整備し、1976年に供用開始された。2005年の同公団民営化に伴い県道路公社が移管を受け、管理・運営している。移管後に、宇都宮-清滝間(普通車)を920円から450円にするなど料金を引き下げた。
05年度から14年度まで単年収支はほぼ黒字で、同年度には償還金残額は約25億円まで減少した。だが、16年から取り組んでいる大規模リニューアル事業により、償還金残額は22年度末現在で約93億円に膨らんでいる。
同事業は、橋梁(きょうりょう)の耐震化や橋梁・トンネルの老朽化対策を29年度まで実施する予定で、事業開始後も対象橋梁や修繕箇所が追加されるなど事業費がかさんだ。さらに、人件費や資機材の高騰、自動料金収受システム(ETC)機器といった管理設備の更新などもあり、料金引き上げが必要だとしている。
道路の安全性や高いサービス水準を維持するには、保全や修繕にコストはかかる。だが、負担を利用者だけに求めるのではなく、管理者側のコスト削減努力も不可欠だ。
県は昨年、日光道などの在り方を検討する有識者懇談会で、宇都宮-清滝間(普通車)の料金を現行の470円から670円に引き上げた場合の収支予測を示した。償還金残高はピーク時で120億円程度となるが、29年度から減額傾向をたどるとしている。
試算通り進むとも限らず、状況の変化もあり得る。県はそうした場合を想定した対応策も準備しておくべきだ。
地元の日光市などは今年、「市民生活と産業の発展を支える大動脈」などと、早期の無料化を求める要望書を知事に提出した。市民の生活道路的な側面を考慮し、将来的には地元住民に配慮した施策も検討すべきだろう。