足利市は8月4日から、出先機関を含む市役所窓口業務の受付時間を試行的に1時間15分短縮する。朝は30分遅らせ、夕方は45分早めることで現行の「午前8時半~午後5時15分」を「午前9時~午後4時半」にする。職員の時間外勤務を削減し、経費抑制や業務の効率性向上を図ることが最大の狙いだ。
県内自治体で窓口の受付時間を短縮したケースはまだないが、全国的には導入が趨勢(すうせい)となっている。人口減少に伴う税収減が課題となる中、効率的な行政運営は不可避だろう。県内他市町の先例となるよう、足利市は持続可能な行政運営の一端を示してほしい。
市が短縮するのは、住民票の写しや印鑑証明などの交付、助成申請や各種相談などの窓口業務。現在の受付時間では、職員の勤務時間がそのまま来庁者対応と重なる。パソコンの立ち上げなどの事前準備をするためには早めに出勤することが欠かせず、来庁者対応後の残務などで残業が前提の労働形態となっている部署もある。
「市民サービスを維持するためには、職員が早出や残業をするのは当たり前だ」との受け止めもあるだろう。だが、時間外勤務の削減で人件費が抑制でき、財源確保につながるという点も見逃せない。今回の短縮により、職員1人当たりの時間外勤務が昨年度の年間平均169時間から7時間減り、総額3億7400万円だった時間外手当を約1千万円削減できる見通しだ。
住民票などの証明書は、近隣のコンビニエンスストアで午前6時半~午後11時に取得可能だ。コンビニ交付の利用が促進すれば、窓口の混雑が緩和され、より丁寧な窓口対応も可能となる。市民らの協力も不可欠である。
全国的には大津市が2020年に窓口業務の短縮を取り入れ、現在は40以上の自治体で導入または導入予定となっている。本県では那須町が7月から15分短縮する予定だ。県外の先行自治体によると、短縮に伴う市民からの苦情や反発はほとんどないという。
今後も人口減少は続き、行政はより少ない人員で来庁者に対応せざるを得ない。デジタルトランスフォーメーション(DX)化の推進などで代替手段を拡充し、時代が変わっても必要な行政サービスにマンパワーを振り分けていくようにすべきだ。