学校の部活動中などに生徒らが落雷に遭う事故が相次いだ。今年4月に奈良市の私立中高一貫校で部活中のサッカー部員ら中高生6人が救急搬送されたほか、昨春にも宮崎市の私立高校グラウンドでサッカーの練習試合中に高校生18人が病院に運ばれ、1人は今も完治していないという。

 これから本格的に迎える夏季は、積乱雲が発生しやすく落雷被害が増加傾向となる。特に本県は7~9月の雷回数が全国トップクラスである。気象庁の予報に注意を払い、屋外での部活や試合中に黒雲や雷鳴などの異変に気付いたら、安全最優先の速やかな避難行動を徹底してほしい。

 奈良市の事故は4月10日夕に発生した。当日は朝から雷注意報が出ていたが、100人超の生徒と複数の教員がグラウンドにいた。強い雨が降り始めると、直後に落雷があったという。屋根に避雷針を備えたスタンドが近くにあったものの、サッカー部の顧問がネット上で雨雲の動きを確認しようとした際に事故が起きた。

 文部科学省は屋外スポーツの落雷対策として、指導者が事前に気象情報を確認するとともに、黒雲が発生しているのか注意し、天候が急変した場合はためらうことなく活動を中止するように求めている。奈良市の事故後、本県教委もこうした国の通知を基に危機管理マニュアルにある雷への対応の再確認を各校に求めている。現場はこの基本動作をしっかりと守るべきだ。

 大雨や洪水などと異なり、雷は気象庁による警報がなく、注意報しかない。災害規模を事前に把握することなどが難しいためとされる。注意報が発表された時点で、部活動の指導者らは情報を把握しておく必要がある。

 気象庁がホームページで発表する「雷ナウキャスト」などの情報も積極活用すべきだ。既に発生している雷の激しさや落雷の可能性を1キロ四方の範囲で、1時間後まで予測する。雷の活動度が4段階で表示され、部活動などの即中止や生徒らを避難させる際の目安にもなるに違いない。

 屋外活動中、指導者らが一時的にその場を離れることもあるだろう。教職員に限らず、雷に関する知識を生徒らと共有すべきだ。危険を察知したら、指示を待たずに主体的に判断することも肝要である。自分で考え、命を守る行動を取れるようにしたい。