人口減少問題克服の方策を探る官民一体の県人口未来会議は8月、委員らの「共同宣言」として、全県一丸で達成を目指す目標をまとめる。宣言は、一人でも多くの人を取り組みに巻き込むため、危機意識に訴え、共感性の高い内容としなければならない。
県人口は現在、ピーク時の2005年から約14万人減って約187万人。出生数は2年連続で1万人を割り込んでいる。転出超過も止まらず、減少幅は拡大傾向だ。
県は「とちぎ創生15(いちご)戦略」を掲げて対策に力を注ぎ、60年に140万人の確保を目指している。しかし人口減少、少子高齢化は根深く、将来の道筋は見通せていない。福田富一(ふくだとみかず)知事は16日、庁内の少子化対策を推進する本部会議で「状況打開のため考えられる施策を総動員することが必要」と訴えた。
4月に始動した人口未来会議も知事が会長となり、行政や経済、医療・福祉、労働団体などの代表者が委員を務める。各立場で人手不足や非正規雇用、性別役割分業の意識、子育ての負担などの諸課題を提起している。こうした議論を、人口減少対策をさらに進める原動力にしてほしい。
会議は結婚支援の充実、働き方改革の推進といった視点を持って、中心的目標、それを補うサブ目標、具現化策を整理する。「マンダラチャート」と呼ばれる手法で、課題解決プロセスの可視化が期待できる。
県内企業・団体が独自に取り組む行動の「アクションプラン」作りも推進する。目標や取り組みを書き込めるフォーマットを定め、公表する予定である。各組織はプランを策定し実行する流れだ。人口減少を「自分事」として理解を深める契機としたい。
新谷由里子(しんたにゆりこ)県少子化対策アドバイザーは会議で人口減少、少子化を「静かなる有事」と指摘した。人口問題はじわじわと進む一方、変化が劇的ではないため、事態の深刻さを意識しにくい。社会全体の少子高齢化などの問題と、一人一人の仕事と家庭、結婚や出産といった人生設計が複雑に絡み合う難しさもある。
対策の実効性向上に向け、未来会議の宣言が多くの県民の気付きを促し、「オール栃木」の機運高揚を図る新たな一歩としてほしい。宣言は、次代を担う若い世代が希望を持つためのメッセージになるだろう。