「物価高で困っている幅広い人に、減税の恩恵を及ぼしたい」。5月上旬、JR宇都宮駅西口。国民民主党の玉木雄一郎(たまきゆういちろう)代表は集まった聴衆に熱っぽく語りかけた。
昨年の衆院選で「手取りを増やす」政策を掲げ、議席を大幅に増やした国民。参院選の公認を巡る問題などで支持率を落としたが、所得税が生じる「年収103万円の壁」の引き上げやガソリンの暫定税率廃止などで存在感を示す。
玉木代表の演説を聞いた宇都宮大大学院の男子学生(23)は「国民が言ったことを受け止めて情報発信してくれるところがいい。既存の政治家には見られない」と期待を寄せる。
物価高やコメ問題、米国の関税措置への対応などに国民の関心が高まる中、各党は経済対策でしのぎを削る。
象徴的なのが消費税減税だ。立憲民主党や日本維新の会は食料品の税率をゼロにする公約を掲げ、共産党は一律で5%に引き下げる主張を展開。各党は税率や対象範囲に加え、財源でも差異化を図る。
栃木選挙区から立候補予定の立民新人板津由華(いたづゆか)氏(37)は、5%への引き下げについて「抜本的な税制改革が必要で、短期的に国民生活に反映できない」と批判した。立民は基金の取り崩しなどで年5兆円の財源を生み出すとしている。
同じく食料品の課税ゼロを掲げる維新は「医療制度改革で財源を生み出す」(県総支部幹部)と訴える。
対する共産新人の福田道夫(ふくだみちお)氏(66)は「廃止を目指し5%に緊急減税」と踏み込んだ。15兆円とも言われる不足財源は「大企業や富裕層への優遇を見直せば実現できる」と訴える。
新人の大森紀明(おおもりのりあき)氏(54)を擁立する参政党も、税と社会保障を合わせた「国民負担率」の引き下げに意欲を見せる。
こうした減税路線と一線を画すのが、政権与党の自民党だ。石破茂(いしばしげる)首相は「社会保障の大切な財源を軽々しく扱うべきではない」との立場。現職の高橋克法(たかはしかつのり)氏(67)を支援する県北の市議は「多くの市民は財政規律を重視している。安易な減税を『ばかにするな』とみている」と支持する。
一方で「消費減税がないと戦えない」(県連幹部)「2万円の現金給付はばらまきととられる」(中堅県議)といった声もあるなど、党内は揺れている。
参院選の公示まで1週間に迫った。国民生活に直結する経済政策が主な争点となる中、支持を伸ばす政党はどこか。有権者の判断が注目される。(終わり)
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