2024年度の県産農産物の輸出額は8億2366万円となり、前年度比51%増の過去最高となった。県は「とちぎ農業未来創生プラン」で、25年度の輸出額を10億円とする目標を掲げている。達成が手の届くところまで来ているが、10億円は通過点でもある。さらなる輸出拡大に向け地盤を固めるべきだ。

 そのためには輸出先の販路拡大や新規開拓、生産者の新規参入は不可欠である。行政や生産団体などが連携を強化して生産者を支援し、産地づくりを進めてほしい。

 24年度の品目別の輸出額は、主力の牛肉が5億6157万円で同72%増加した。全体の7割弱を占めており、輸出額更新をけん引した。主な輸出先は米国やシンガポールで、県は既存の生産者の輸出量が増加したほか、新規参入も増えたことなどを要因として挙げている。

 牛肉以外では、輸出額3位のイチゴが約2・3倍増の6577万円で大きく伸びた。台湾やタイ、香港が中心で、輸出先の検疫条件などに対応する設備の導入に助成をしていることなどが大幅増につながったとみられる。

 輸出額2位の花きは31%増の1億605万円。23年度は落ち込んだが、24年度は輸出先での需要が拡大し、1億814万円だった22年度レベルまで回復した。

 一方、コメは9%減の5299万円だった。23年度が前年度の2・3倍となっており、24年度について県は「前年並み」としている。国内では品不足から価格が高騰している状況にあり、主食用米の需要は高まっている。国内の供給不足に備えるためにも、輸出用米の生産を増やし、有事に対応できる態勢を築くことも必要だ。

 トランプ米政権の関税政策は、自動車などの工業製品ばかりでなく、農産物輸出にも影響する可能性がある。米国は輸出額の4割を占める最大の相手国である。県など関係機関は国際情勢やニーズの変化などに機敏に対応し、影響を最小限に抑えてほしい。

 人口減少が進む国内では、農産物需要も先細りが見込まれる。海外市場に目を向けて輸出を促進することにより、生産者の経営安定につなげたい。本年度策定する新たな計画では、これまでの取り組みを分析し、戦略的な施策を展開することでさらに高い目標を目指すべきだ。