地球温暖化で熱中症のリスクが年々高まる中、国は今月から事業者に職場での適切な熱中症対策を義務付けた。気温や湿度から算出する「暑さ指数」が28以上または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上か1日4時間超の作業が対象となる。事業者は対策を怠ると6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される可能性がある。

 2024年に国内の職場で熱中症死傷者は1257人と過去最多となり、県内も過去10年間で2番目に多い17人だった。各事業者は早期発見や重症化予防に向けた体制の整備に努め、働き手の命を守る取り組みを強化すべきだ。

 厚生労働省などによると、本県の1人を含む20~23年の死亡事例103件を分析した結果、死者の7割が屋外作業に従事していた。複数の理由があるものを含め、発見の遅れ78件、異常時の対応不備41件だった。今回の改正労働安全衛生規則施行に伴う義務化は、早期発見と医療機関への連絡体制の整備、救急車が到着するまでの緊急対応の手順作成などが柱である。

 同省によると、熱中症は他の労災と比べ死亡災害に至る割合が5~6倍と突出している。死者の大半は日差しの厳しい屋外のほか、熱のこもりやすい工場などでの作業が多い建設、製造関連で目立つ。

 第一に熱中症を未然に防ぐ事業者の対応が急務である。暑さ指数が分かる市販の「暑さ指数計」の導入とともに、冷房完備の休憩所や屋外作業所への屋根の設置などは必須だろう。暑さ対策の関連グッズの活用や、体の不調を早期発見する職場の巡視なども欠かせない。

 栃木労働局は9月末まで、「STOP!熱中症クールワークキャンペーン」を推進している。暑さ指数に応じた休憩や作業の中止、定期的な水分・塩分の摂取や従業員の健康診断結果に基づく対応を各事業者に啓発する。従業員も日頃の健康管理や、異変を感じた場合は速やかに担当者へ連絡する姿勢を心がけたい。

 気象庁は24日に発表した9月までの3カ月予報で、本県を含む関東甲信地方は暖かい空気に覆われ、気温も高いと見込んでいる。引き続き暑さへの警戒は必要だろう。

 職場以外でも対策は欠かせない。適切な水分補給や冷房の使用、高温時の不要不急の外出回避など基本動作の徹底が求められている。