30日午前6時40分ごろ、那須塩原市埼玉(さきたま)の店舗兼住宅敷地内で、この家に住む自営業須藤和男(すどうかずお)さん(72)が「大人のクマ1頭に人が襲われ、頭をかまれた」と110番した。同市、農業男性(73)が体長約1・5メートルのクマに後頭部や首をかまれ、35針を縫う重傷を負った。命に別条はない。現場は民家や学校が集まる市街地。県によると、県内の市街地でクマに人が襲われ負傷するのは初めて。

那須塩原署によると、男性は襲われる前、現場から約200メートル離れた自宅付近の水田でクマを目撃。近所の須藤さん宅に向かい、一緒にクマを確認するため車で出かけようとしたところ、クマに遭遇した。

クマは須藤さんの軽トラックに体当たりした後、玄関近くにいた男性を襲った。玄関内に避難した男性を追って網戸にも体当たりしてから立ち去り、行方が分からなくなった。
現場付近では同6時35分ごろにも、散歩していた別の男性から「クマが路上を走り回っている」と通報があった。署は同一の個体とみている。県内で人がクマに襲われたのは今年初めて。
市は現場周辺で住民らに不要な外出を控えるよう注意を呼びかけながら見回り活動を行った。市学校教育課によると、周辺の小中学校17校には、30日の下校時と翌1日の登下校時を原則保護者の送迎とすることを通達した。

現場から南西約200メートルの埼玉小は、30日の登下校で保護者の送迎を依頼し、子どもたちの屋外活動を取りやめた。5年生の子どもを迎えに来た同市上厚崎、パート長倉楓(ながくらかえで)さん(31)は「捕獲されておらず、どこにいるか分からないので不安。家の戸締まりをし、買い物も遠出するなどしたい」と話した。